2015 Fiscal Year Research-status Report
海嶺下における熱水循環システムと海嶺セグメント構造
Project/Area Number |
15K05309
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
宮下 純夫 新潟大学, 自然科学系, フェロー (60200169)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 海洋地殻 / オフィオライト / 熱水変質作用 / 海嶺 / オマーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,オマーンオフィオライトを例として海嶺下における熱水循環システム,その浸透深度,海嶺セグメント構造との関連の解明を目指して以下の研究目的を掲げていた.地殻の異なった深度から発見された緑泥石岩体について岩石学的・地球化学的検討を行う事により,海洋地殻内における熱水循環システムと物質移動について解明することである. 緑泥石岩体についてはオマーンでの地質調査を実施し,新たに3岩体を発見するとともに,既知の4岩体について詳細な調査を実施した.その結果,緑泥石岩がエピドートサイトを包有している産状から両者の前後関係が明確となった.また,比較的浅部に出現する緑泥石岩体には,特徴的に石英脈が発達することも明確となった. 以上のことから,緑泥石岩体の形成は海嶺軸下で形成されたとみなされるエピドートサイトの形成後に海嶺翼部で形成されたことが次第に明瞭になりつつある.また,浅部の緑泥石岩体における石英脈の出現は,深部で大量に溶脱したシリカが,地殻上部で温度低下に伴い析出したことを示唆している. 一方,周囲の母岩について系統的な全岩化学分析を行った結果,緑泥石岩体から100 m以上離れた位置からはCu濃度が平均100 ppm前後含まれるのに対し,それより近接する母岩のCu濃度が著しく枯渇しており,緑泥石岩体の形成に伴って,緑泥石岩及びその広い周囲からCuが溶脱したことを示唆している.つまり,塊状硫化鉱床の起源が緑泥石岩体にあることを強く示す結果が得られた.このことは,従来の鉱床成因論を再考する必要があることを示している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査により,新たに3つの大きな緑泥石岩体を発見したことにより,緑泥石岩体が出現する位置が,海洋地殻下部のガブロ層上部から地殻浅部のシート状岩脈群を経て溶岩層まで追跡することが可能となった.つまり,海底下での熱水循環と熱水変質作用について,一連の深度変化の中で解析することが可能となった.こうした成果は,従来の海嶺下での熱水循環と物質移動に関する新たなパラダイムを提出する可能性をもたらすこととなった. また,周囲の母岩についての系統的な地球化学的分析を実施することにより,Cuの挙動が緑泥石岩体によって大きく影響されていること,つまり,緑泥石岩体及びその広い周囲から銅がリーチングされていることも明らかになりつつある.このことは,従来の塊状硫化銅鉱床の成因論に新たな展望を切り開くものであり,これらのことから,研究計画は概ね順調に進展していると評価した.
|
Strategy for Future Research Activity |
野外調査は概ね予定どうり推移し,かつ予想以上の成果を上げることができた.第2年度に関しては,初年度に得られた岩石試料に関して,系統的な岩石記載,化学分析,鉱物組成分析を実施する.そのことにより,地殻深部における熱水循環と物質移動の特徴を明らかにするとともに,その熱水流体が地殻を上昇していく際の変遷過程を解明することを目指す. また,これまでの成果を纏め上げ,国際・国内学会で発表するとともに,論文として公表する準備を開始する.
|
Research Products
(3 results)