2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05318
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高木 秀雄 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60154754)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 断層ガウジ / 中央構造線 / 活断層 / 火山ガラス / K-Ar年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は,長野県の中央構造線(以下MTL)安康露頭,溝口露頭,溝口北露頭,非持露頭の4つの露頭を中心に野外調査と,採取試料の偏光顕微鏡観察を中心に検討を実施した.その結果,以下のことが明らかとなった. 1.安康露頭における暗色のガウジ部は,MTLの境界のガウジをG1としたときに,領家帯側にMTLから離れるに従ってG2,G3,G4の幅1-3程度のガウジ帯が認められる.このうちG3ガウジから三波川結晶片岩由来のフラグメントが確認された.G4ガウジの緑色部も組成的に三波川由来と考えられることから,領家帯内部に挟在する形で三波川帯要素がテクトニックスライスとして存在することが明らかとなった. 2.安康露頭と溝口北露頭では,最も軟らかいガウジ部分に段丘礫層の落ち込みが認められ,段丘堆積物堆積以降の活動が明らかとなった.さらに,非持露頭では,MTL境界から三波川帯寄り50cm離れた部分の断層が段丘堆積物をずらしていることが明らかになった.いずれの最新活動部も,断層ガウジの構造は右横ずれを示す. 3.上記非持露頭の段丘堆積物から火山灰層を探したが見つけることはできなかった.ただし,堆積物基底部から約2m上位の部分のシルト~砂層を採取した所,ごく少量であるが火山ガラスが認められた.今後このガラスの組成を明らかにして,給源火山と対比可能なテフラを同定することにより,活断層の可能性を明確にしたい. これらの成果は,2015年9月の日本地質学会長野大会で発表し,今年の5月の地球惑星連合大会でも発表予定である.断層ガウジの中でも最も軟らかい部分については,安康露頭と溝口北露頭で採取し,K-Ar年代測定用の分離作業を16年度に実施して,2016年度中にK-Ar年代測定を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は,これまでに無いほどの南アルプスの積雪量と春の高温とがあいまって,美和湖の水位が異常に高い状態が6月ごろまで継続したため,伊那市に存在する3つのMTL露頭が水没した.さらに流木が露頭を覆ってしまったため,その除去に,地元のジオガイドやジオパーク協議会メンバーのサポートを受けた.また,期待していた火山灰が見つからず,火山ガラスを見つけるまでかなり時間を使ってしまった.また,断層ガウジを分離して粘土鉱物をXRDで特定する予定だった研究補助学生が,大学を中退してしまったこともあり,15年度中に年代測定を開始することができなかった.しかしながら,夏の調査以降は概ね順調に進み,2016年度は遅れを挽回できる見込である.
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Strategy for Future Research Activity |
1.本研究の重要な部分である断層ガウジの年代測定用試料については,すでに採取済みであることから,再度それを4つのフラクションに分離し,SEMで分離状況を確認した上で年代測定試料を確保することを早急に実施し,安康露頭と溝口北露頭の2つの軟らかいガウジ試料から4フラクションずつ8サンプルのK-Ar年代測定を進める. 2.火山ガラスの分析は,難しい部分もあることから,慣れている業者に委託して,データの信頼性を高めたい. 3.安康露頭から採取した様々な断層岩の薄片観察も進めて,剪断運動の履歴とともに,領家帯と三波川帯の混在のメカニズムを考察する.
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Causes of Carryover |
年度末に多忙を極め,小額の残額のために配慮することが叶わなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定通りの計画で余剰分も含めて使い切り,不足分が出る場合は,何らかの形で補填できるように検討したい.
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Research Products
(2 results)