2016 Fiscal Year Research-status Report
首長竜を中心とする上部白亜系蝦夷層群の海生爬虫類化石の分類学的研究
Project/Area Number |
15K05327
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
佐藤 たまき 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90466912)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 古生物 / 化石 / 中生代 / 分類学 / 爬虫類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画には、北海道の蝦夷層群から産出した化石標本の記載、博物館の所蔵する標本の調査、野外調査の3つが含まれている。 1.北海道勇払郡むかわ町立穂別博物館の訪問調査を行い、首長竜HMG1067 の部位の同定と記載に必要なデータ収集と骨学的特徴を図示する scientific illustration の作成をほぼ終了した。並行して首長竜 HMG 1 の再記載に向けたデータ収集も進めた。また、首長竜HMG 357 の記載論文を共著で執筆・投稿した。また、北海道中川郡中川町の中川エコミュージアムが所蔵する未記載のプリオサウルス類首長竜化石の記載に必要なデータを取り始め、同町で爬虫類化石を産出する地域で発見されたサメ化石についての学会発表を行い論文が受理された(いずれも共著)。北海道留萌郡小平町においては、同町教育委員会が所蔵する同町蝦夷層群から産出した本邦では産出例が少ない種類のウミガメ上科やモササウルス上科の標本について調査をすすめた。前者については日本古生物学会例会においてポスター発表を共著で行い、後者に関しては共著論文の執筆を進めた。また、同町には標本台帳が存在しないことが判明したため、台帳の基礎となるデータ一覧を作成した。 2.むかわ町穂別川上流と中川町ニオ川において野外調査を行い、同地域から産出した首長竜などの脊椎動物化石の産出層準を確認した。 3.標本の産出地の自治体及び勤務地周辺における講演やメディア取材を通じて研究活動のアウトリーチ活動に取り組んだ。 4.Museum of Northern Arizona(アメリカ)を訪問し、比較標本としてポリコティルス類のタイプ標本(Palmulasaurus quadratus, Eopolycotylus rankii, Dolichorhynchops tropicensis)などの形態を精査した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は複数の部分(複数の標本記載、野外調査、比較標本調査など)からなり、それぞれの進捗状況には多少の凸凹があるが、おおむね順調である。 標本記載に関しては、「メインディッシュ」であるHMG 1067 の記載に必要な情報と図の作成がほぼ終了した。本標本は調査中に展示用の型取り作業のために標本が他機関に搬出されたり、作図が終了した部位のクリーニングが進められて作図をやり直すことになったりしているものの、訪問を複数回に分けたり一部を研究者所属機関に送付するなどして遅れを最小限に留めることができている。この他の標本調査も標本所蔵機関や関連分野の研究者の協力を得て進められている。また、研究計画当初は首長竜が中心になると考えていたが、首長竜以外の爬虫類やサメなどの同時代の他の生物の化石標本が未記載・未研究のまま博物館等で眠っている状況がますます明らかになったため、調査を特定の分類群に絞りすぎない方針に転換した。 野外調査に関しては、台風が連続上陸した時期に重なったために河川が増水し、調査可能な日数が限られた。しかし、調査ができない期間は地元博物館の標本調査に充てるなどしてダメージ軽減をはかった。 比較標本の調査に関しては、予定よりも訪問先を絞り、滞在期間も短くせざるをえなくなった。これは勤務先の業務で長期出張が可能な時期が限られ、航空運賃や宿泊費が高いシーズンにぶつかったことが主要な原因である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本研究計画の最終年度であることから、データ収集を続けながらも論文執筆や学会発表に重点をおいて研究を進める。また、昨年度に引き続き研究成果を一般市民や児童・生徒などに向けて紹介するアウトリーチ活動も積極的に行っていきたい。学校教育向けのアプローチとして、2017年1月に行った日本生物教育学会の招待講演の内容を同学会誌にて今年度中に出版予定である。 前年度に引き続き勤務先の業務で長期出張が可能な時期に制限がかかる可能性が非常に高い上に、発表を予定している Annual Meeting of Society of Vertebrate Paleontology の開催時期が例年より前倒しされて8月になったため、旅費が当初の予定より嵩むことが既に判明している。また、日本古生物学会の開催地がいずれも遠方(北九州年会、愛媛例会)であるため、こちらも旅費で苦労することが予想される。いずれもいかんともしがたいが、研究計画へのダメージを最小限に留めるよう心掛けたい。
|