2016 Fiscal Year Research-status Report
日米産前期白亜紀アンモナイトの古水塊指標としての評価と環北太平洋地域の古気候変遷
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15K05328
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
松川 正樹 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (30127914)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 前期白亜紀 / アンモナイト / 体系的記載 / 古生物地理 / 北方系・南方系・環太平洋系 / 古水塊 / 古海流 / 海進・海退 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本と米国加州のアンモナイト動物群を研究し,成果の一部を論文で発表した.助成金は,研究を遂行するための調査旅費に当てられた. 1.岩手県の下部白亜系宮古層群産のアンモナイトに関して,論文をCretaceous Researchに投稿し,現在査読中である.この論文では,(1)動物群を構成する4新種を含む33種を体系的に記載した.(2)既に記載された種を含めた55種を基に,各種の生層序分布を示し,3つの化石帯を設定し,西欧や北米太平洋岸地域と精密対比した.(3)アンモナイト動物群は,形態的に多様化した種からなることを示した.(4)これは海進に伴う生息域の拡大によると解釈した.(5)これらの種の分布は,環太平洋の海流に支配されていることを述べた. 2.高知市の下部白亜系産アンモナイトに関して,論文を東京学芸大学紀要に投稿し,現在審査中である.この論文では,(1)動物群を構成する1新種を含む18種を体系的に記載した.(2)動物群は下部と上部の構成からなり,下部の構成はBarremian期を上部の構成は後期Aptianを示す.(3)3種は,後期Aptian期に海流によりフィリピンから高知に移動したと解釈した. 3.米国加州北部Ono地域の下部白亜系から産出したアンモナイト標本について,Marshallites属の2種を体系的に記載した.(1)Marshallites属はフィリピンでの出現が最も早く,日本,カムチャッカ,アラスカ,カナダ,加州での出現ほど遅くなることを見いだした.(2)この間の種の絶滅と出現は古水塊の温度変化に伴う海進海退によると解釈した.(3)前期白亜紀アンモナイトの幾つかの種は環太平洋地域を西から東へ移動したことを述べた.この論文は現在執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本側の宮古層群と高知盆地のアンモナイトを体系的に記載し,動物群の特徴を議論した.特に,宮古層群ではアンモナイトの化石帯を設定し,西欧と北米太平洋岸地域との精密対比をした.これは,日本における下部白亜系アンモナイトの化石帯の初めての設定である. 北米加州に関して,Ono地域から産出したアンモナイト標本の保管博物館(California Academy of Science)で,約2,000個の標本を観察し,分類した.そして,その中から前期白亜紀アンモナイトの幾つかの種は環太平洋地域を西から東へ移動したことを見いだした.さらに,先行研究としてのAnderson (1938)によるアンモナイトのmonographの分類の再検討と再記載の必要を見いだし,取りかかった.その意味では,順調に推移していると評価出来る.
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Strategy for Future Research Activity |
日本側の研究は,期間内に論文原稿を完成できる見通しを持った. 北米加州に関して,California Academy Science (CAS)の保管標本の約2,000個を調べ,分類した. 標本の多くは,Anderson (1938),Murphy (1975)により記載されたアンモナイト種に同定される.しかし,Anderson (1938)には多くの同物異名の種が含まれることを見いだしたので,それらを整理して体系的に記載する.約2,000個の標本の産出地点,層準が公表されていない.CASには,標本に関する地質学的データが保管されているので,それに基づきOno地域内のルートの下部白亜系の岩相層序を作成する.そして,化石の産出層準を示し,各種の産出範囲を決定する.さらに,化石帶を設定し,日本を含む北太平洋各地との精密対比をする. 研究協力者のDr. J. Haggartは,カナダとアラスカのアンモナイト動物群について研究を進めているので,これらの知識を加えることにより研究目的に対する答えを導き出すことは可能の見通しを持っている.
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Causes of Carryover |
宮古層群の野外調査と車の借り上げに関して,他の資金を使用することができたので,科研費で計上した予算を使用しなかった.また,試料整理のための謝金を計上したが,補助者の労力を使わず資料処理ができた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度の北米と国内の調査旅費に組み入れて使用予定である.
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Research Products
(6 results)