2017 Fiscal Year Research-status Report
岩石の衝撃圧縮実験とシュードタキライト:深部地震震源過程の物質科学的研究
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15K05341
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小畑 正明 京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (20126486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安東 淳一 広島大学, 理学研究科, 教授 (50291480)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地震 / 断層 / マントル / かんらん石 / 衝撃圧縮実験 / 摩擦溶融 / シュードタキライト |
Outline of Annual Research Achievements |
かんらん石結晶に衝撃圧縮を加えて剪断面を生ぜしめ剪断面に形成した微細構造を観察することで、地震発生時の震源過程のメカニズムを研究することが研究目的である。 前年度までの実験結果をふまえて、2段ガン衝撃圧縮実験用に新たに鉄カプセルを設計し、一体型のより強固なカプセルを作成した。この新デザインカプセルを用いて、平成29年9月に熊本大学パルスパワー科学研究所において、2段ガンを用いてかんらん石単結晶の衝撃圧縮実験を行った(RUN#12)。実験は成功しサンプルを首尾よく回収することができた。ユゴニオの解析から第1波の圧力36.9 GPa、反射波の圧力50.2 GPaという結果が得られた。 その後、収した鉄カプセルを京都大学において回旋盤を用いて切断研磨し、顕微鏡観察用の薄片試料を作成した。この薄片試料について京都大学においてまず走査電子顕微鏡観察を行った結果、剪断面が多数形成し、一部剪断面に沿って局所的に溶融が起きている可能性のある箇所を見つけることができた。この結果をふまえて、広島大学において共同研究者により透過電子顕微鏡を用いて観察作業を継続しているところである。 これに並行して、前回の実験の結果をまとめて投稿して査読を受けた論文の改訂作業を継続中である。 またイタリアのBalmucciaかんらん岩体に産する'地震の化石' シュードタキライトの研究成果の投稿論文草稿を共同研究者と共に作成中である。 これまでの研究で、かんらん石結晶に一軸圧縮で新たに剪断面ができて断層がずれる時にまず粉砕がおこり、その次に摩擦溶融が非平衡的に起こることがわかってきた。これは地震発生時の震源断層形成時に起こる現象と同等であると考えられ、したがって地震発生の過程の基礎研究に貢献できる重要な研究成果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでより衝撃時に高圧を発生させるために前年度初めて2段ガンを用いた衝撃圧縮実験を試みたが、衝撃の際にサンプルを入れたカプセルの蓋が外れて吹っ飛びサンプルが失われて回収ができず、実験は失敗に終わった。今年度はこの経験を踏まえて鉄カプセルを新たに設計し、一体型のより堅牢なカプセルを作成した。この過程に時間がかかってしまい、全体に研究があとにずれ込んでしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度衝撃圧縮実験で回収したサンプルについて電子顕微鏡観察を継続して行う。 追加の衝撃圧縮実験を熊本大学で行う。 投稿論文の改訂作業を継続する。 イタリアBalmuccaのシュードタキライトと、衝撃圧縮実験の結果の比較研究を継続し、研究成果を順次公表してゆく。
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Causes of Carryover |
当初計画していた二段ガンを用いた衝撃圧縮実験の実施において想定外のトラブル(衝撃によるカプセルの破壊)が発生し、カプセルの再設計を含み実験方法の改良に時間がかかることで計画実施に遅れが生じた。回収された試料の電子顕微鏡による観察はまだ完了していない。実験の継続と研究成果の取りまとめ、研究成果公表にもう少し時間が必要なところである。 共同研究者との研究打ち合わせと、研究成果発表のための学会参加の旅費に使う。
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