2016 Fiscal Year Research-status Report
必須脂肪酸と必須アミノ酸の安定同位体比を利用した動物プランクトンの餌資源の解析
Project/Area Number |
15K05355
|
Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
山本 修一 創価大学, 理工学部, 教授 (20182628)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 炭素・窒素安定同位体比 / 必須脂肪酸 / 動物プランクトンの餌資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、動物プランクトン(動プ)としてオニヒトデ幼生(Acanthaster planci)を使用し、植物プランクトン(植プ、Dunaliella sp.)を餌とする飼育実験を行った。そして本研究の課題として(1)動プが食した植プの炭素・窒素安定同位体比が如何に動プに反映するか、(2)植プの脂肪酸組成が動プに如何に反映するか、(3)植プ中の脂肪酸の炭素同位体比が動プ中の脂肪酸の炭素同位体比に如何に反映するか、の検討を行った。 その結果、(1)Dunaliella sp.(δ13C: -21.9‰、δ15N: 1.19‰)で培養したAcanthaster planciは飼育後ブラキオラリア初期まで成長し、安定同位体比も初期値(δ13C: -14.9‰、δ15N: 4.62‰)から(δ13C: -20.2‰、δ15N: 3.34‰)へと、次第に植プDunaliella sp.の値に近づいていった。このことは植プのCおよびNは動プに同化されていることを示している。(2)受精卵や孵化直後にはC16:1, C18:1, C18:2, C20:1, C20:2, C24:1などの不飽和脂肪酸が含まれていたが、成長後にはC16:1, C18:1の不飽和脂肪酸しか含まれていなかった。餌として与えた植プもC16:1,C18:1不飽和脂肪酸しか含まれていないことから、バルク同位体比の変化の結果と同様に、脂肪酸の分子レベルでも同化されていることが示唆された。しかしながら、いずれの試料も多価不飽和脂肪酸が少なく、目的である必須脂肪酸の同化が起こっているかどうかは不明であった。そのため、(3)多価不飽和脂肪酸の分析方法(online-TMAH GCMS法)そのものに問題がある可能性もあり、明年度の検討課題として残された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物プランクトン(動プ)が植物プランクトン(植プ)を同化していることは、炭素および窒素安定同位体比、また脂肪酸組成の観点から示唆されてきた。しかしながら、脂肪酸の分子レベルでの炭素同位体比およびアミノ酸の窒素同位体比で同化したことを確認し、動プの食性を知る方法を作成することが本研究の本来の目的である。研究当初、多価不飽和脂肪酸の分析がonline-TMAH-GCMS法(熱分解装置を直結したGCMSで、試料にトリメチルアンモニウム塩を添加して加水分解と誘導体化を同時に行える簡便法)で十分行えることが文献および予備実験で確認されていた。しかしながら、使用した植プ(Dunaliella sp.)が以前検討した種と異なり、必須脂肪酸を含む多価不飽和脂肪酸が少なく、そのため動プ(Acanthaster planciの幼生)に必須脂肪酸が同化したかどうかを確認できなかった。これには簡便法であるOnline-TMAH-GCMS法が、多価不飽和脂肪酸の分析に適さない可能性も出てきた。そこで現在、多価不飽和脂肪酸を多く含む植プを選定すると共に、多価不飽和脂肪酸の分析方法をOnline-TMAH-GCMS法だけでなく、従来からの溶媒抽出法も含めて検討を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進は、研究の進捗状況にも述べた課題を踏まえて、以下のように行う。 (1)多価不飽和脂肪酸を多く含む植物プランクトン(植プ)を選定(候補:珪藻のPhaeodactylumやChaetoceros、またハプト藻類のIsochrysis)すること、また動物プランクトン(動プ)もAcanthasterだけでなく、サンプリング場所である相模湾で多く採取可能なカイアシ類のCalanus sinicusやAcartia steueriを使用する。 (2)多価不飽和脂肪酸の分析方法をOnline-TMAH-GCMS法だけでなく、従来からの溶媒抽出法も含めて検討する。 (3)植プおよびその植プを食した動プの脂肪酸の炭素同位体比の測定を行う。 (4)(3)と同時進行でアミノ酸の窒素同位体比の測定を実施する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額(約15万円)が生じているが、これは大学からの研究費および他の外部資金(沖縄県の委託研究費やIODP: International Ocean Drilling Programからの委託研究費)も採択されたため、研究に共通の消耗品などで余裕がでたためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
直接経費として翌年度分が600,000円と繰越金として143,887円を合わせて、743,887円である。翌年度は、最終年度に当たるため、学会発表などの使用する予定である。
|