2017 Fiscal Year Research-status Report
必須脂肪酸と必須アミノ酸の安定同位体比を利用した動物プランクトンの餌資源の解析
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15K05355
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
山本 修一 創価大学, 理工学部, 教授 (20182628)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 炭素・窒素安定同位体比 / 多価不飽和脂肪酸 / 必須脂肪酸 / 動物プランクトンの餌資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)必須脂肪酸の分析方法の再検討 昨年度の結果から多価不飽和脂肪酸である必須脂肪酸の分析方法を再検討する必要性が生じた。そこで、3種の植物プランクトン、Thalassiosira sp.、Dunaliella sp.、およびChaetoceros sp.を用いて、溶媒抽出法と2種の誘導体化試薬(BF3法およびTMS法)の組み合わせ、また熱化学分析法においては2種の試薬(TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウムとTMSH:水酸化トリメチルスルホニウム)とonline法とoffline法の組み合わせで、詳細な検討を行った。その結果、TMSH試薬を用いた方法が最も必須脂肪酸の分析に適していることが明らかになった。そこで、TMSH法ではさらにonline法での加熱温度を280ー445℃の範囲で変化させて検討した結果、多価不飽和脂肪酸の分析にはOnline-TMSH法の280℃あるいは358℃が最も適していることがわかった。 (2)オニヒトデ幼生の必須脂肪酸分析の検討 動物プランクトンとしてオニヒトデ(Acanthaster planci)幼生を用いて280℃、Online-TMSH法で必須脂肪酸の分析を実施した。その結果、C16, C18飽和脂肪酸、C16:1, C18:1一不飽和脂肪酸、また多価不飽和脂肪酸としてC18:2、C20:4,C20:5,C22:6が分析可能であることがわかった。特にω-3系列の必須脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA;20:5 FA)とドコサヘキサエン酸(DHA;22:6 FA)が分析可能であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物プランクトンが植物プランクトンを同化していることは、本研究において炭素および窒素安定同位体比、また脂肪酸組成の観点から示唆されてきた。しかしながら、脂肪酸の分子レベルでの炭素同位体比およびアミノ酸の窒素同位体比で同化したことを確認し、動物プランクトンの食性を知る方法を作成することが本研究の本来の目的である。研究当初、多価不飽和脂肪酸の分析がonline-TMAH-GCMS法(熱分解装置を直結したGCMSで、試料に水酸化テトラメチルアンモニウムを添加して加水分解と誘導体化を同時に行える簡便法)で十分行えることが文献および予備実験で確認されていたが、動物プランクトン(オニヒトデ幼生)では必須脂肪酸を含む多価不飽和脂肪酸が予想に反して定性・定量的に十分に分析できないことがわかってきた。そこで、昨年度は多価不飽和脂肪酸の分析方法の検討を実施した結果、280℃、Online-TMSH(水酸化トリメチルスルホニウム)法で多価不飽和脂肪を含む必須脂肪酸の分析が可能なことが明らかになった。そこで一年間の延長が認められたので、本年度はOnline-TMSH法で必須脂肪酸の炭素同位体比の分析を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進として、一年間の延長を認めていただいたので研究の進捗状況にも述べた課題を踏まえて、以下のように行う。(1)多価不飽和脂肪酸(必須脂肪酸)を多く含む植物プランクトンを用いて、Online-TMSH法による多価不飽和脂肪酸の炭素同位体比の分析条件を検討する。(2)(1)の条件を用いて、動物プランクトン(オニヒトデ幼生)に応用する。(3) 植物プランクトンを食した動物プランクトンの必須脂肪酸の炭素同位体比の測定を行い、必須脂肪酸を同化したことを確認する方法を作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(約20万円)が生じているが、これは他の外部資金(沖縄県の委託研究費やIODP: International Ocean Drilling Programからの委託研究費)も採択されたため、研究に共通の消耗品などで余裕がでたためである。
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