2016 Fiscal Year Research-status Report
粘性抵抗性磁気流体力学に基づく天体プラズマシミュレーション
Project/Area Number |
15K05369
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
簑島 敬 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 研究員 (00514811)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁気リコネクション / 磁気流体力学 / プラズマ運動論 / 粘性 / 熱伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙・天体プラズマにおける普遍的現象であり、オーロラや太陽フレアなどのエネルギー解放を駆動する磁気リコネクションの非線形数値シミュレーションを実施している。 プラズマの巨視的な振る舞いを記述する磁気流体モデルでは、電気抵抗が磁気リコネクションの重要なパラメータである。一方で本研究では、現実の天体プラズマ環境に即して、流体の粘性や熱伝導が磁気リコネクションに及ぼす影響に注目している。散逸性磁気流体シミュレーションのパラメータサーベイから、粘性散逸が電気抵抗より速く、かつ熱伝導が粘性散逸より速い時に、リコネクション領域で大きな渦が効率的に生成され、速いリコネクションが達成されることを発見し、その理論モデルを提案した。本成果を論文としてまとめ、Physics of Plasmas誌で発表した。 宇宙空間を満たす無衝突プラズマでは、粘性や電気抵抗といった散逸過程は複雑な波動粒子相互作用の結果生じ、その記述には流体近似を用いない第一原理計算が必要である。そこで、上記の磁気リコネクションの散逸性磁気流体モデルを無衝突系で検証するために、第一原理運動論シミュレーションを実施し、実効的な粘性係数と電気抵抗係数を測定した。その結果、リコネクション領域付近で電気抵抗より大きな実効的粘性が発生していることを発見した。これは、無衝突磁気リコネクションの磁気流体近似モデルとして、従来用いられてきた抵抗性磁気流体モデルではなく、本研究で提案する散逸性磁気流体モデルがより妥当であることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁気リコネクションの散逸性磁気流体シミュレーションを広いパラメータ範囲で実施し、粘性と熱伝導が及ぼす影響を明らかにした。 さらに、無衝突系と比較するために第一原理運動論シミュレーションを追加で実施し、実効的な粘性の存在を見出し、散逸性磁気流体シミュレーションと整合的な結果を得た。 シミュレーションはスーパーコンピューター上で順調に実施しており、次年度もさらなる調査を継続する準備が整っている。 以上より、本研究課題の進捗状況は概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の散逸性磁気流体シミュレーションでは、粘性係数、熱伝導、解像度、システムサイズ、システム縦横比の依存性について広く調査した。 次年度は、計算規模が大きくなるが、磁気リコネクションの重要なパラメータである電気抵抗の依存性について調べる予定である。 これと並行して、第一原理運動論シミュレーションでは、今年度得られた結果の検証のために、イオンと電子の質量比や、プラズマ周波数とサイクロトロン周波数の比の依存性について調べる予定である。
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Causes of Carryover |
シミュレーションの実行や解析のために計算サーバを購入予定であったが、所属機関が保有する資産に加えて外部資産も利用できたため、本年度はこれらで間に合った。そこで購入を見合わせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画通り計算サーバの購入費用に充てる。
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