2015 Fiscal Year Research-status Report
全原子を量子論で取り扱う凝縮系化学反応動力学理論の開発
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15K05375
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 反応動力学 / 量子ダイナミクス / リングポリマー分子動力学法 / 量子効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に液体中の化学反応系の全自由度を量子的に取り扱うための予備的なプログラム開発と計算環境の整備を行った。 具体的には、まず原子力研究開発機構の志賀基之氏が開発した量子ダイナミクス計算を行うPIMDコードに、当研究グループが開発した気相中のグアニン‐シトシン負イオンにおけるプロトン移動反応のポテンシャルエネルギー曲面関数とその微分関数を組み込むことを実施した。これをテストケースとして、グアニン‐シトシン間のプロトン移動反応について、リングポリマー分子動力学法を用いた量子ダイナミクス計算を実行した。特に温度効果および同位体置換効果について詳細に調べ、核を量子的に取り扱った場合では、温度が低くなると反応速度が速くなるという特異な現象を見出した。この結果を論文としてまとめ、Chemical Physics誌に投稿し、採択・掲載された。 前述の応用計算は、孤立系の気相化学反応であるため、上記計算コードとポテンシャル関数コードのリンクの妥当性を踏まえて、次に溶媒中における化学反応シミュレーションコードの開発に着手した。最初のステップとして、原子核運動の量子効果が極めて高いと考えられるヘリウム液滴(数百個から数千個からなる極低温のヘリウムクラスター)中の金属原子の励起ダイナミクス反応について、プログラム開発を行った。具体的には、ヘリウムクラスター中で銀原子の基底状態(s状態)が光吸収によって瞬間的に励起状態(p状態)に変化した後の全原子運動のダイナミクスを追跡する計算コード開発を行った。現在、リングポリマー法で用いるビーズ数の収束性の確認やヘリウム原子数の選択等を行っている状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は、理論計算実行のための予備的なプログラム開発と計算環境の整備であり、特に問題も発生せず、予定通りの研究活動を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずヘリウムクラスター中の化学反応ダイナミクスについて詳細なテスト計算を行う。その後、より一般的な溶液である水溶液中で起こる化学反応系へ研究を展開する予定である。そのため、具体的な反応系について十分な予備調査を行ったのち、ポテンシャルエネルギー関数の開発を行う。この場合、新たに我々のグループで包括的な電子状態計算を行う必要があることも念頭に置いている。
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Research Products
(16 results)