2016 Fiscal Year Research-status Report
非イオン性二分子膜の光磁気機能材料化へ向けた界面電子移動の研究
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15K05384
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三浦 智明 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80582204)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 光誘起電子移動 / 非イオン性二分子膜 / 磁場効果 / スピンダイナミクス / 過渡吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
過渡吸収異方性測定や幅広い電子移動系への展開へ向けて、ナノ秒過渡吸収装置の高感度化を前年度に引き続き行った。高輝度キセノンランプをプローブ光源に用い、シリコンPINフォトダイオードを検出器とすることにより、従来の光電子増倍管と比べて格段に大きな光量が扱えるようになり、最大感度は数マイクロOD(時間分解能15 ns, 128回積算)に達した。これに偏光素子を組み合わせ、ポリマーマトリクス中におけるZnTPP色素の励起三重項状態における異方性信号を観測することに成功した。今後は二分子膜サンプルに適用し、膜内回転拡散に関する検討を行う。 これまで検討してきた巨大磁場効果発現系である、Niosome膜中におけるZnTPP-ジオクチルビオロゲン系において、近接ラジカル対と解離ラジカル対の2つのサイト間の遅い行き来と、近接対における高速再結合が重要であることを定常磁場効果とその理論シミュレーションから示してきた。今回、ナノ秒パルス磁場効果および時間分解EPRを用いた共同研究から、それぞれ近接ラジカル対および解離ラジカル対に対応する信号を観測することに成功し、このモデルの妥当性を示すことができた。 ジオクチルビオロゲンは水溶性を示すため、ドラッグデリバリー応用を考えた場合、投与後に濃度が減少してしまい都合が悪い。また、ビオロゲンは高毒性である。そこで、高疎水性かつ無毒性なアクセプターであるコエンザイムQ10(CoQ10)をアクセプターとした電子移動系を構築した。ZnTPPの光励起により、CoQ10との間で高速な膜内電子移動が起こり、長寿命(~6 us)ラジカル対が生成した。ラジカル対は磁場(0.2 T)中で9 usまで長寿命化したが、ジオクチルビオロゲン系のような早い時刻における巨大磁場効果は観測されなかった。理論計算から、近接対における高速(~10 ns)のスピン緩和が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コエンザイムQ10系においてこれまで観測されなかった高速緩和の存在が示唆された。ここから巨大磁場効果の発現機構に関して新たな展開が期待できる。また、ドラッグデリバリー等の応用研究へ向けた展開も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
過渡吸収および蛍光の異方性解消実験から、膜内におけるZnTPPの動力学を明らかにする。コエンザイムQ10系における定常磁場効果の濃度依存性、温度依存性およびパルス磁場効果、時間分解EPR等の実験を多角的に進め、巨大磁場効果の制御因子であると考えられる高速緩和の機構解明を行う。また、同様の高疎水性キノン誘導体とビオロゲン誘導体を用いた多段階電子移動系を構築し、光エネルギー変換への応用へ向けた研究を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は主に過渡吸収を用いた実験を中心に研究を行い、ここで新たな展開があったため、誘電緩和・蛍光異方性等、新たな測定手法の開発には至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
蛍光異方性の測定へと向けた光源の導入を行う。
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Research Products
(9 results)