2017 Fiscal Year Research-status Report
非イオン性二分子膜の光磁気機能材料化へ向けた界面電子移動の研究
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15K05384
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三浦 智明 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80582204)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 光誘起電子移動 / 非イオン性二分子膜 / 磁場効果 / 多段階電子移動 / 膜形態制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
光磁気応答ドラッグデリバリーおよび人工光合成の実現に向けた非イオン性二分子膜(ニオソーム)電子移動系の研究を引き続き行った。前年度は、亜鉛ポルフィリン色素と、無毒かつ膜に強吸着されるコエンザイムQ10を用いた電子移動系において、長寿命電荷分離状態および磁場効果を観測した。これを人工光合成へ向けた多段階電子移動系に発展させるため、コエンザイムQ10を、より還元されづらいビタミンK1に替えた実験を行った。コエンザイムQ10系同様、光照射により膜内における長寿命電荷分離状態(~2 us)生成が観測され、顕著な正の磁場効果が観測された。ここに水溶性電子受容体であるジエチルビオロゲン、またはやや親水性の低いジオクチルビオロゲンを添加したところ、光生成電荷分離状態のビタミンK1ラジカルアニオンからビオロゲン誘導体への電子移動が起こり、ビオロゲンフリーラジカルの生成が観測された。また、正の磁場効果もビオロゲンラジカルへ移動した。電子移動効率はジオクチルビオロゲンの方が高く、膜への吸着ダイナミクスの違いによるものと考えられる。ここで得られた知見を応用すれば、膜界面を利用した光水素発生、および磁場による高効率化が可能になると期待される。 ドラッグデリバリー応用に向け、水溶性薬剤を多く内包できるよう、コレステロールを多く添加してサイズの大きい膜を調製した。この膜を用いた亜鉛ポルフィリン‐ビタミンK1間の光誘起電子移動でも長寿命電荷分離状態、および磁場効果が観測された。この系では、光照射に伴い徐々に寿命や磁場効果が減少する光劣化が観測された。しかし、光劣化後もポリフィリン、キノンともに化学変化は見られないことから、光反応によって膜の物性に変化が生じたものと考えられる。このことは光と磁場による膜形態制御の可能性を示しており、ドラッグデリバリーへの応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非イオン性二分子膜を用いた光磁気応答型ドラッグデリバリー、および人工光合成へとつながる電子移動系開発に成功した。今後の詳細な機構解明研究からこれらの実現に向けた知見が得られるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
多段階電子移動系に関してはスピン動力学シミュレーションを行い、電子移動ダイナミクスおよび磁場効果の制御機構を明らかにする研究を行う。膜形態の光制御に関しては、蛍光プローブ等を用いて、光反応による膜形態変化の詳細を明らかにする。
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Causes of Carryover |
光機能性材料化へ向けた新規二分子膜カプセル電子移動系の創製に成功したが、再現実験を含む追加の実験およびそれに必要な装置のメンテナンスが必要である。また、研究成果に関する論文を現在執筆中であり、学会発表も行う予定である。
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