2015 Fiscal Year Research-status Report
凝縮系水素が発現する特異状態の分子内・分子間ダイナミクスによる計算科学的解明
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15K05386
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金 賢得 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30378533)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水素 / 核量子効果 / 分子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
核だけでなく電子も同時に波束化し、スピン自由度を含めてフェルミオンとして扱うことでパウリの排他エネルギーを取り入れた量子分子動力学法を確立した。これにより、モデル相互作用ポテンシャルや経験的パラメータを導入することなく、分子間相互作用ポテンシャルの期待値がLennard-Jonesポテンシャルに特徴的な長距離分散力をしっかり表現できるようになり、飽和蒸気圧下のノーマルな液体や固体をはじめ、クラスターから高圧固体まで幅広い水素量子凝縮体への適用が可能となった。これは、長距離分散力を持たない第一原理密度汎関数法では実現不可能な本手法の最大のアドバンテージである。 飽和蒸気圧下で安定的な六方最密構造を持つ固体水素を実現することにも成功し、液体の場合のT型とは異なるジグザグ型の近接配向や、結晶格子方向に依存した異方的フォノンモード、そして固相librationの動的解析など量子分子性固体としての特性の提唱を行った。特に、液体から固体への相転移温度を正確に再現し、相転移によるlibration周波数の劇的変化やHH振動数の数cm-1オーダーの微小飛びまでを記述することに成功している。 最近では、冷却実験で未だに捉えられていない過冷却(準安定)状態をcomputationalに達成し、①温度上昇と共にredシフトして消えていくボゾンピークが出現し、その起源は部分的に崩壊したメゾクラスター内のフォノンモードである、②固体より低密度にもかかわらず動径分布関数の第一ピークが固体よりも近くに存在する、③配向ダイナミクスの時定数の温度依存性が液体と過冷却液体で明確に変化するため両者を区別しえ、その変化は拡散メカニズムの質的変化(cage脱出からメゾクラスター変形への変化)によって説明しうることを発見した。これらは将来、準安定状態の実験的モニタリングに役立つ先駆的情報となるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子分子動力学法を用いた様々な熱力学状態下の水素系を順調に解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
手法の拡張及び様々な非平衡系への適用を試みている。
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Causes of Carryover |
研究員を雇用するための謝金が必要になったため物品費をセーブした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画を遂行するための研究員の謝金に充てる。
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