2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05388
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀尾 琢哉 京都大学, 理学研究科, 助教 (40443022)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超高速分光 / 光電子分光 / 真空紫外パルス / イメージング / 化学動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、筆者らが開発したパルス幅サブ20fsの真空紫外極短パルス(中心波長159および133 nm)を超高速光電子イメージング法のプローブ光に用いることで、気相孤立分子の光異性化反応をリアルタイムに観測することである。 研究計画で掲げた目標通り、既存の光電子イメージング装置の改良およびその性能評価は初年度(平成28年度)中に完了し、本研究計画の基盤を整えた。当初、今年度は、その改良した装置を使いて実際に光異性化反応のリアルタイムを行う計画であった。しかしながら、同波長域の極短パルスを超高速光電子イメージング法に適用する試みは世界中で開始行われており、そのイニシアティブを取るためにも、既存装置で得られていた実験結果を至急論文として纏め上げる必要が生じた。そのため、今年度前半は、133 nmの真空紫外パルスを用いてピラジンの高速無輻射過程の全貌を明らかにした研究、および159 nmの真空紫外パルスにより、ピラジンのリュードベリ状態および価電子励起状態からの電子緩和過程を明らかにした研究を、米国物理学協会の化学物理系専門誌J. Chem. Phys.にBack-to-Backとして誌上発表した(前者は、2016年における同雑誌のEditor's Choiceに選出されている)。 今年度後半は、二硫化炭素(CS2)のS3状態からの高速光解離反応(CS2 + hv → CS + S(3P/1D)について研究を行った。化学結合がダイナミックに変化するという観点から、光解離反応と光異性化反応は共通しており、まずは単純な直線三原子分子に対して本実験手法の有用性を示すことは本研究計画を遂行する上で非常に重要であると考えた。この研究では、133 nmの真空紫外パルスを用いることで、解離生成物の一つであるスピン一重項の硫黄原子S(1D)のリアルタイム検出に初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光異性化反応のリアルタイム観測には至っていないものの、超高速光電子イメージング法において、真空紫外極短パルスの有用性を実証することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、継続中のCS2の光解離反応に関する研究を行い論文として纏める。スピン一重項硫黄原子S(1D)のリアルタイム検出については、既に米国物理学協会の化学物理系専門誌J. Chem. Phys.に掲載受理が決定しており、解離機構の詳細について別の論文として纏める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度前半に、論文執筆作業(二報)に注力し、物品購入費の使用が当初の計画よりも少なかったため(その分が、論文の英文校閲料に充当された)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品購入費に充当する。
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