2015 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤や高分子ゲルのように振舞う有機溶媒水溶液
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15K05400
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| Research Institution | Doshisha University |
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Principal Investigator |
貞包 浩一朗 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (50585148)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 溶媒和効果 / 自己組織化 / 相転移 / レオロジー |
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| Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らはこれまでに、有機溶媒に「拮抗的な塩」を加えることで、多重膜小胞体構造や繊維状構造のような秩序性が高い階層性構造が自発的に形成されることを明らかにしている。この知見に基づき、本年度は(1)多重膜膜小胞体や繊維状構造が形成される要因について調べた。更に、(2)これらの秩序構造に対する外場、とりわけ流動場の影響について調べた。
(1)の研究では、3-メチルピリジン水溶液、2,6-ジメチルピリジン水溶液にそれぞれ「拮抗的な塩」であるナトリウムテトラフェニルボラート（NaBPh4）を混合させたときの溶液の構造を、偏光顕微鏡を用いて観測を行った。その結果、どちらの混合溶液においても、室温より低い温度で、塩の濃度が150mmol/L付近のサンプル条件であるときに構造が最も安定化されることが分かった。また、同混合溶液に20mMの塩化ナトリウムを更に加えることで、多重膜小胞体構造は更に安定化され、20mM以上の濃度で構造が破壊される、という結果も得た。150mMのNaBPh4濃度や、20mMのNaCl濃度で構造が最安定となる要因について明らかにするため、現在核磁気共鳴を用いて溶液中での分子間相互作用に着目した観測を進めている。(2)の研究では、まず溶液に流動場を加えながら顕微鏡観察を行うためのサンプル容器を設計・製作した。この容器を用いて有機溶媒水溶液+拮抗的な塩の混合溶液に対する流動場の影響について調べたところ、せん断流動場の下では1μm以下のサイズの多重膜小胞体が誘起されて空間を埋め尽くす様子が観測された。また、層流を加えた場合には、多重膜小胞体構造が変形し、繊維状の構造へと変化する様子も確認できた。構造が変化する要因として、現在コロイド同士の摩擦の効果を考慮しながらモデルを構築している。
以上の結果の一部は、既に学会にて発表を行い、幅広い研究者と議論も進めている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
拮抗的な塩が秩序を安定化させるサンプル条件を一部明らかにすることができたが、3-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、アセトニトリル以外の有機溶媒ではまだはっきりとした結果を得ることができていない。このため、どのような種類のサンプルが構造を安定化させるのに有効なのかはまだきちんと分かっていない。
以上の点以外は、研究は概ね順調に進行している。
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| Strategy for Future Research Activity |
まず、(1)拮抗的な塩が構造を安定化させるのに有効な有機溶媒の種類を明らかにする。今のところ、有機溶媒として3-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、アセトニトリルを用いた場合に秩序性の高い構造が確認できているため、これに近い分子構造を持つ有機溶媒に着目しながら更に実験を進める。次に、(2)「水」「有機溶媒」「拮抗的な塩」からなる混合溶液に対する流動場の影響について、ナノメートルの空間スケールで明らかにする。今のところ、100(1/s)程度のせん断速度を加えることで数十nmサイズの構造変化が生じることを確認できているが、今後は更に微小な構造変化にも着目しながら実験を行う。装置は大強度陽子加速器施設（J-PARC)の中性子散乱装置（BL15, TAIKAN）を用いる予定である。最後に、(3)光ピンセットによるマイクロレオロジー実験を行い、拮抗的な塩が誘起する多重膜小胞体構造や繊維状構造の曲げ弾性率や界面張力の測定を行う。これにより、秩序が安定化される要因について理解を掘り下げる。
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| Causes of Carryover |
当初国際学会「環太平洋国際化学会議」の参加を予定していたが、大学業務と日程が重複したため取り止めた。この旅費に相当する研究費が未使用となっている。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、「シアセル」という特殊なサンプル容器を用いた実験を大強度陽子加速器施設（J-PARC、茨城県東海村）で予定しており、予備実験も含めて何度か出張を計画している。そのための旅費として使用する。
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Research Products
(4 results)
