2016 Fiscal Year Research-status Report
In-Cell NMRによる生きた細胞への薬物輸送のリアルタイム定量解析
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15K05401
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
岡村 恵美子 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (00160705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安岐 健三 姫路獨協大学, 薬学部, 助手 (50714945)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超精密計測 / 生物物理 / リアルタイム解析 / In-Cell NMR / 薬物輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、薬物として、親水性でありながら、疎水性の細胞膜を透過する機能性の膜透過ペプチド・オクタアルギニンについて、ヒト白血病細胞株への輸送過程を、in-cell NMRにより分単位でリアルタイム計測した。温度を変化させることで、エンドサイトーシスによる輸送と膜輸送タンパク質が関与しないエネルギー非依存的な物理的膜透過を識別することに成功した。また、物理的膜透過がどのようなプロセスを経て進行するのか、そのメカニズムについて検討した。ペプチドを細胞に添加すると、NMRシグナルが経時的に変化し、フリーの成分の他に新たに3種のコンポーネントが現れることを確認することができた。各コンポーネントの帰属は、それぞれ対応するモデル系についてのNMR計測と熱測定(Isothermal Titration Calorimetry)および細胞分画により確認した。NMRシグナルの分割を行い、各コンポーネントの強度を算出することで、それぞれの状態におけるペプチド濃度の推移を定量化した。その結果、正電荷を有するオクタアルギニンが、まず、(1)負に帯電した細胞表面のグリコサミノグリカンと静電相互作用した後、(2)疎水性の細胞膜を透過し、(3)細胞内のサイトゾルに入ることを、in situで明らかにすることができた。今回の結果は、エンドサイトーシスによらない物理的膜透過の進行の様子を、生きたままの状態でリアルタイムで捉えた点において画期的であると考えられる。以上の成果は、取りまとめて論文に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ペプチドをNMRで観測するためにフッ素標識を用いるが、年度内にNMR装置のフッ素観測の感度が不良となり、観測不能の状態が一定期間継続した。
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Strategy for Future Research Activity |
NMR装置が復旧したため、研究を再開する。薬物・生理活性物質として、今後さらに、HIVウイルス由来の膜透過ペプチドやアミロイドベータを用いて、生きた細胞への作用のリアルタイム計測を実施することにより、本方法論の妥当性を確認し、適応範囲を広げる。同時に、定量的な速度論的解析に展開する予定である。
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Causes of Carryover |
ペプチドをNMRで観測するためにフッ素標識を用いるが、年度内にNMR装置のフッ素観測の感度が不良となり、観測不能の状態が一定期間継続した。そのため、薬物として、オクタアルギニンを用いた膜透過研究の実施のみとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薬物・生理活性物質として、次年度に、フッ素標識HIVウイルス由来の膜透過ペプチド、アミロイドベータペプチドの合成に使用する。
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