2015 Fiscal Year Research-status Report
量子ビームを利用したイオン液体が作る電気二重層の振る舞いの解明
Project/Area Number |
15K05402
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
田村 和久 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (10360405)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イオン液体 / 電気二重層 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、電気化学測定および量子ビーム(放射光・中性子)を利用した測定を組み合わせることで、これまでよりも、より精密にイオン液体/電極界面で形成される電気二重層の構造を決定することを目的とする。具体的には、イオン液体には、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを、電極にはシリコン単結晶を用いた。イオン液体は、真空下で24時間脱水してから使用した。実験では、イオン液体が電気化学的に分解されない電位範囲にて、一定の速度で掃引しながら、電流値と適当な2θ角におけるX線反射率強度を測定し、それぞれの電位依存性を調べた。インピーダンス測定については、同じ電位範囲にて、適当な電位間隔おきに行った。電流値の電位依存性(電流電位曲線)には、特徴的な電流ピークは観測されない一方で、X線反射率強度は、ゆっくりと大きく変化し続けることが分かった。一方で、インピーダンス測定の結果からは、ナイキストプロットに2種類のパターンがあり、電気二重層の構造は、極めて単純な場合と、複雑な等価回路で示される場合の2種類存在することがわかった。電流電位曲線は、特定の電極電位における電気化学反応の反応速度を反映し、インピーダンス測定は、電極/電解液界面の電気特性を反映する。また、X線反射率は、電気二重層全体の構造を反映する。以上のことから、電極/イオン液体界面では、電流電位曲線上では検出できないような非常にゆっくりとした速度で、電気二重層は常に構造変化をし、一方で特定の電位で可逆に大きく変化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通り、電気化学測定やX線反射率測定を行っている。しかしながら、中性子反射率測定については、測定用の電気化学セルについては、順調に整備が進んでいるが、実験施設であるJ-PARCの運転状況により、実験の実施が滞っている。課題申請は採択されており、割り当てがあり次第、実験を施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
電気二重層の構造の基本的な振る舞いについては、電気化学測定とX線反射率測定により明らかにすることができたが、今後は、より詳細に構造解析可能な中性子反射率測定に取り組んでいく。具体的には、引き続き、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド/シリコン単結晶電極界面について研究を行うとともに、これまで研究を行ってきた金単結晶電極界面についても取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
本年度は、中性子実験施設の都合により、実験課題の募集がなく、実験費用を支出しなかったため。また予定していた国際会議に参加できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に行う中性子実験実験、および国際会議の参加予定の旅費に使用する。
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