2016 Fiscal Year Research-status Report
光受容体ロドプシンとDNA・RNA螺旋構造における弱い相互作用の理論研究
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15K05408
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Research Institution | Quantum Chemistry Research Institute |
Principal Investigator |
宮原 友夫 特定非営利活動法人量子化学研究協会, 研究所, 部門長 (70397595)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 弱い相互作用 / DNA・RNA / 光生命科学 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は、高精度の励起状態理論であるSAC-CI法を用いて、生命科学に重要な弱い相互作用を明らかにすることであり、本年度は、光駆動イオン輸送ロドプシンに応用した。 細胞膜に存在する光駆動イオン輸送ロドプシンは、光を受けたレチナール色素がall-transから13-cisに光異性化することにより、H+などのイオンが細胞膜間を移動する。H+を輸送するバクテリオロドプシン、Cl-を輸送するハロロドプシンに加えて、2013年にNa+を輸送するロドプシンが発見された。光異性化反応に伴いK,L,M,N,O中間体の吸収スペクトルの変化が観測されているため、これらをSAC-CI法により計算し、3種類のイオン輸送メカニズムの違いについて考察した。 バクテリオロドプシンでは、L,N中間体において、レチナールの近くに存在するアルギニン(ARG82)の回転により相互作用が大きく変化し、吸収スペクトルが変化することが明らかになった。ハロロドプシンは、レチナールのシッフ塩基の近くにCl-が存在しているが、O中間体でCl-は細胞内に取り込まれている。O中間体では、シッフ塩基から移動したCl-の代わりに、シッフ塩基と水素結合している水がOH-となっていることが示唆された。ナトリウムイオン輸送ロドプシンでは、レチナールのシッフ塩基からアスパラギン酸(ASP116)にH+が移動した後、ASP116の回転によるできた空洞をNa+の通過することが示唆された。また、Na+が通過した後に、レチナールは13-cisからall-transに異性化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は光駆動イオン輸送ロドプシンのスペクトル変化のシミュレーション計算から、これらに含まれるレチナール色素と蛋白質の弱い相互作用の変化を明らかにすることができた。一方、視物質ロドプシン中の円二色性(CD)スペクトル変化に伴う弱い相互作用変化の研究や、DNAの四重鎖構造中の弱い相互作用の研究は現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
視物質ロドプシンの円二色性(CD)スペクトル変化に伴う弱い相互作用変化の研究を行う。また、老化・がん細胞の増殖に関与しているテロメアに含まれる四重鎖構造のG-quadruplexと相補鎖i-motifの円二色性(CD)スペクトルを計算し、これらに含まれる弱い相互作用を明らかにする。
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Remarks |
認定NPO法人量子化学研究協会研究所ホームページ http://www.qcri.or.jp/
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Research Products
(4 results)