2016 Fiscal Year Research-status Report
プロスタグランジン合成酵素の機能と反応に関する計算科学的解明
Project/Area Number |
15K05411
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
森 聖治 茨城大学, 理学部, 教授 (50332549)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海野 昌喜 茨城大学, 理工学研究科, 教授 (10359549)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | プロスタグランジン類 / 酵素反応機構 / QM/MM計算 / 異性化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、プロスタグランジンD合成酵素の反応機構のQM/MM計算を中心に行った。マウス由来リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素と基質アナログU46619の複合体のNMR構造をもとに、ONIOM-EE計算を行った。この酵素の活性部位にあるCys65残基は周囲に存在するヒドロキシ基をもつアミノ酸であるSer45、Thr67、Ser81と水素結合ネットワークを形成することによって、活性化されることが実験によって明らかとされている。PGH2異性化反応によるPGD2合成の反応機構に関する理論的検討は、以前当研究室により行われた。 この理論的検討では、チオレートイオンをMeS-としたモデルが用いられ、チオレートアニオンがPGH2の11位の炭素に結合した水素に求核攻撃することによって反応が容易に進行することを示唆していた。一方、11位の炭素に結合したエンドペルオキシドの酸素原子にチオレートアニオンであるシステインが求核攻撃、続いて周辺のヒドロキシ基を持つアミノ酸を介したプロトン移動により反応が進行する経路も求まったが、エネルギー的には不利であった。本研究では、NMR結晶構造に対して、Cys65の残基はチオレートアニオン状態であることを仮定し、NMR構造のU46619をPGH2に置換して、ONIOM-EE計算を行った。その結果、モデル系の量子化学計算とは異なり、後者の反応経路の方がエネルギーに有利であることを示した。反応経路を決めるのに酵素の効果が現れたことを示している。現在は、MMフレキシブル領域の検討を行っている。シクロオキシゲナーゼ触媒によるアラキドン酸のPGG2への変換反応については、引き続き検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大規模系の計算でかなり難しい課題なので、論文執筆まで至っていないが、H29年度が最終年度なので、結果に結びつくように努力する。
|
Strategy for Future Research Activity |
COX-2触媒の反応機構の研究成果はまとめ、L-PGDS触媒のPGD2異性化反応機構については、NMRで決めた結晶構造に依存するので、分子動力学シミュレーションの条件などさらに検討したい。
|
Causes of Carryover |
研究遂行のため、学内外の計算機サーバー(岡崎国立研究機構・計算科学研究センターの計算機も含む)を用いており、新たに計算機の購入にまで至らなかった。そのため、支出は少なかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度は、成果の発表(招待講演)のため、カナダ・Parry Soundで行われる6th Georgian Bay International Conference on Bioinorganic Chemistry (CANBIC-6)に出張する計画をすでに立てた。そこでは、トロントで行われるカナダ化学会年会にも参加し情報収集も行う予定である。さらに、研究に必要な計算機やソフトウエアの購入に用いる予定である。
|
Research Products
(4 results)