2015 Fiscal Year Research-status Report
四置換シクロプロパンの不斉合成と不斉伝搬を鍵とする高選択的有機合成
Project/Area Number |
15K05420
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西井 良典 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (40332259)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | シクロプロパン / 不斉合成 / ラクトン / リグナン / 生物活性 / 天然物 / 全合成 / 環開裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロプロパンは炭素最小員環であり、環構造に由来する配座異性体は存在しない。すなわち、環を構成する3つの炭素がエクリプス配座になる点で、その置換基のリジッドな立体配置をうまく活用すれば、置換シクロプロパンの特徴を生かした高立体選択的合成ができる。我々はドナーアクセプター型シクロプロパンを含むビシクロラクトンのオキシホモマイケル付加は、立体反転で進行することを利用し、生物活性 α,β-trans-置換-γ-ラクトン系リグナン類の不斉全合成を行った。林―ヨルゲンセン触媒を用いる不斉シクロプロパン化により四置換シクロプロパンを合成し、ホルミル基の還元後、ラクトン化することにより高選択的にビシクロラクトンを合成した。合成したラクトン にルイス酸触媒存在下、アルコールを作用させると、高位置選択的、高ジアステレオ選択的かつ高い不斉伝搬性でオキシホモマイケル反応が進行し、三連続不斉中心を有するラクトン を良好な収率で得た。このとき、アルコールの付加は高立体選択的に反転で進行し、ケト-エノール互変異性に伴うα位の立体は高トランス選択的に進行した。先に述べた不斉転写環オキシホモマイケル反応により α,β-trans-γ-ラクトン (95% ee) を高ジアステレオかつ高エナンチオ選択的に合成した。続いてα位炭素のベンジル化の後、脱炭酸し、最後に脱保護して (-)-7-hydroxymatairesinol の全合成を達成した。スペクトルデータは、天然物由来の既知データと一致した。一方、同様の方法で tupichirignan も合成したが、既知のデータに一致しなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シクロプロパン開裂を伴うオキシホモマイケル反応の立体制御は予想以上に高選択的に進行することを見出した。得られた生成物のαー位のベンジル化の後、脱炭酸を経由して高トランス択的に変換する手段も確立した。これにともなって、派生する 1,5-付加反応が進行することも見出した。また、開発したオキシホモマイケル反応を鍵反応として、生物活性を有する複数の天然物の全合成を達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、多置換シクロプロパンのリジッドな立体配置をうまく活用し、多置換シクロプロパンの特徴を生かした高立体選択的合成を引き続き実行する。今後、多置換シクロプロパンの構築法を新たに検討するとともに、多置換シクロプロパンのリジッドな立体配置をうまく活用する変換反応、さらに多様な生物活性リグナン類を合成する。特に8員環形成反応の検討を重点的に行いたい。
|
Causes of Carryover |
国際学会(環太平洋化学会議)への参加を予定していたが、まずは国内での発表を充実させたため、予定した経費より少なくなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度請求額と合わせて、成果発表のための学会参加を増やして使用する。
|