2016 Fiscal Year Research-status Report
四置換シクロプロパンの不斉合成と不斉伝搬を鍵とする高選択的有機合成
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15K05420
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西井 良典 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (40332259)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シクロプロパン / 環開裂 / 環化 / 高立体選択的 / エナンチオマー / ジアステレオマー / リグナン / 不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)光学活性なドナーアクセプター型シクロプロパンに銅トリフラート触媒存在下、アルコールまたはカルボン酸を作用させるとシクロプロパン開裂を伴う高立体選択的なオキシホモマイケル反応が進行することを見出した。この反応は SN2 反応型機構で進行する。 2)光学活性なドナーアクセプター型シクロプロパンに銅トリフラート触媒存在下、グリニャール試薬を作用させるとシクロプロパン開裂を伴う高立体選択的な1,5-付加反応が進行することを見出した。この反応はグリニャール試薬と銅触媒のアート錯体を経由する機構で進行するが、完全なγ位の立体反転を伴う。 3)自在に多置換シクロプロパンを合成し、シス型とトランス型置換シクロプロパンジカルボン酸ジエステルそれぞれのドナーアクセプター型シクロプロピルカルビノールの環開裂―環化反応を行うと、どちらもトランス型ジヒドロナフタレンを高選択的に与えた。これらの結果から、立体選択性発現の経路と反応機構を示した。 4)四塩化チタンを用いるドナーアクセプター型シクロプロパンジカルボン酸ジエステルのホモナザロフ型環化反応を見出し、生成するジヒドロナフトールをトリフラート化することにより、多置換ジヒドロナフタレンの高立体選択的な合成を達成した。また、トリフラート基はさらにパラジウム触媒を用いる各種カップリング反応が進行することも示した。 5)Pd-C 触媒存在下、光学活性ドナーアクセプター型シクロプロパンジカルボン酸ジエステルに水素を作用させる還元的開環反応を見出した。この反応を鍵反応とする Yatein の全合成も達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究成果は、1) ドナーアクセプター型シクロプロパンのオキシホモマイケル付加反応、2) 銅アート錯体を用いる アルキル基の1,5-付加反応、3) 高トランス選択的分子内フリーデルクラフツ反応、4) Pd-C を用いる触媒的加水素分解、5) 生物活性リグナンの全合成への応用と5報の国際論文として掲載済みまたは掲載が決定していることから、複数のピアレビューを経た成果になっている。量的にも順調なペースである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在得られている成果の scope and limitation を含めて検討し、総合的にまとめて行く。その中で、新たな応用や、詳細に探索するべき未知の部分を見出しつつ、当該テーマを発展させる。例えば、従来の合成法の改良点と高立体選択性発現の機構についても考察する。また、合成途上にあるトリロバチン B、リグナンアミドおよびステガナシンの全合成を達成する。トリロバチン B については、生物活性の発現が期待できる類縁体の合成も含めて検討する。ステガナシン合成については、酸性条件ではテトラリンを与えるので中性条件での八員環化を検討している。
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Causes of Carryover |
順調に成果が出た項目をまとめる段階で、分離精製に必要な大量の溶媒と高額試薬を購入する必要のあるテーマを次年度に集約したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額と平成29年度請求額を合わせて分離精製に必要な大量の溶媒と高額試薬を購入する必要のあるテーマを遂行し完結させる。 分離精製に必要な大量の溶媒を必要とするテーマ:生物活性物質の不斉全合成 高額試薬を必要とするテーマ:有機触媒および希少金属触媒を用いる反応の開発
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