2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K05428
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
関谷 亮 広島大学, 理学研究科, 准教授 (00376584)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超分子ポリマー / ナノグラフェン / 水素結合 / 量子収率 |
Outline of Annual Research Achievements |
グフェンの研究は,主として理論・物性の観点から研究が推進されているが,有機化学及び超分子化学の観点からグラフェンを扱う研究は殆どなされていない。これはグラフェンが有機溶媒に不溶であることが一つの原因である。そのため,グラフェンと有機化合物を有機溶媒中で反応させることが困難である。しかし,グラフェンの表面あるいは外周部分に有機置換基を導入することができれば,グラフェンの持つ電子物性・光学特性に摂動を与えることができるばかりか,グラフェンにはない新しい機能性を付与することが可能である。 外周部分に反応活性な三重結合を多数導入したナノグラフェン(GQD-1)を用いることで様々な機能性有機化合物を外周部分に導入することができる。本研究ではこのGQD-1を用い,ナノグラフェンのポリマー化と発光性有機化合物の導入による発光特性への影響について検討を行い,以下の成果を得た。 1.ナノグラフェンに異なる機能性有機化合物の導入する手法を開発した。 2.芳香環を有する有機化合物を合成し,ナノグラフェンの外周部分の導入することで発光量子収率の向上が期待できることを明らかにした。 3.ナノグラフェンの外周部分に超分子的な相互作用が可能な機能性有機化合物を導入することで,ナノグラフェンのポリマー状集合体の形成に成功した。 今回の研究の結果,ナノグラフェンのポリマー化の実現に向けて有用な研究成果が得られた。また,外周部分に有機化合物を導入することで,量子収率が変化することを見出した。今年度はこれらの研究をさらに推進していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機溶媒に対して親和性の高い有機化合物をGQD-1の外周部分に導入した。これにより得られたナノグラフェン(GQD-2)に有機化合物が導入されたことは核磁気共鳴分光法や赤外線分光法などを用いることで確認した。有機化合物の導入量は,反応に用いる原料の量を調整することで制御できることがわかった。 GQD-2の合成と並行して,2-ureido-4(1H)pyrimidinonを合成した。この有機化合物をHuisgen環化反応を行うことによりGQD-2に存在する未反応部分の反応活性部位に導入した。得られたナノグラフェン(GQD-3)中の長鎖アルキル基とureidopyrimidinon誘導体の比率は,合成の際に用いたそれらの比率とほぼ同じであることがわかった。この結果は,一段階の反応で二種類の有機化合物をナノグラフェンの外周部分に同時に導入でき,かつそれらの比率を制御できることを示すものである。 GQD-3はureidopyrimidinon同士の水素結合により連結され,その結果重量平均分子量(Mw)が増大するはずである。そこで,GPCによりMwの算出を試みた。その結果,ureidopyrimidinon誘導体の導入率が最も高いGQDで大きな増加が見られた。これは導入率が高くなると,それだけナノグラフェン同士が連結される可能性が高まったためであると考えられる。 上記研究と並行して,様々な有機化合物を合成し,これらをナノグラフェンの外周部分に導入した。Huisgen環化反応を用いて外周部分に導入するのではなく,GQD-1の前駆体である外周部分が酸化されたナノグラフェンと直接反応させることで,これらの有機化合物を導入した。その結果,導入した有機化合物の種類によっては量子収率が変化することがわかった。現在これらのGQDの発光挙動を調査している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究の結果,ナノグラフェンのポリマー化の実現に向けて有用な研究成果が得られた。また,外周部分に有機化合物を導入することで,量子収率が変化することを見出した。今年度はこれらの研究をさらに推進していく予定である。具体的には 1. GQD-3のポリマーとしての性質を調査する。必要に応じて新たに有機化合物を合成し、それをナノグラフェンの外周部分に導入し、この結果得られたナノグラフェンについてもポリマーとしての性質を調査する。 2. GQD-4の光物性を調査する。特に、蛍光寿命やリン光について調査を行う。
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Causes of Carryover |
概ね研究計画通りに研究が進行していたが、年度末に学会等の移動費・宿泊費等が当初に予定よりもすくなくすんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に行われる学会の参加費等に使用する予定である。
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Research Products
(26 results)