2015 Fiscal Year Research-status Report
協働効果を発揮する多様な触媒の構築が可能な系の開発
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15K05429
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小島 聡志 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70215242)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ピリダジン / 対称 / 非対称 / 求核性 / 塩基性 / 触媒能 |
Outline of Annual Research Achievements |
複素環の窒素原子をLewis塩基部位弱いLewis酸を酸性部位にもち,それらの協働効果による活性化効果の発現を検討するに当たり,用いる複素環の選択が必要となる。そこで,ピリジンと比べて検討例の少ないピリダジンを対象とし,性質を把握することにした。4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)は,求核触媒として汎用性が高く,特に酸無水物とアルコールからエステルを生成させる反応では,最も広く用いられている触媒であるが,対応する4-ジメチルアミノピリダジンの触媒能が著しく低いことが報告されていた。そこで,5位にもアミノ基を導入し2つのアミノ基を環内に固定すれば不利を克服して触媒能が上がると考えその誘導体を検討することとした。合成に関しては,3種類の誘導体をヒドラジン塩酸塩と3,4-ジクロロ無水マレイン酸からそれぞれ4段階で合成できた。その際に,対称の4,5-ジアミノ体に加えて非対称の3,4-ジアミノ体も副生したので,その検討も行った。Et誘導体についてCD3CN中で塩基性を比較したところ,非対称体>DMAP>対称体となり,非対称体と対称体とでは,pKaの差が1のあることがわかった。また,フェナシルブロミドを求電子試薬に用いて求核性を比較したところ,CDCl3中では,非対称体:対称体:DMAP=19:6:1,C6D6中では,非対称体が溶けなかったためそれ以外について比較したところ対称体:DMAP=14:1となった。上記のエステル化反応における触媒能を検討したところ,CDCl3中では,DMAP:非対称Et体:対称Et体:非対称Bn体:対称Me体:対称Bn体の順となりおおよその速度比が9:3.5:3:3:1:1となった。ところが,C6D6中では,DMAP:対称Et体=1:2と逆転し分子設計がある程度正しいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複素環の窒素原子をLewis塩基部位弱いLewis酸を酸性部位にもち,それらの協働効果による活性化効果の発現を検討するに当たり,予備実験で,ピリジンが,塩基性が4-ジメチルアミノピジン(DMAP)と比べて低いにも関わらず十分に役割を果たすことができた。ピリダジンはピリジンと比べてさらに塩基性が低いことが知られていることから,ピリダジンも検討対象とすることにしたが,求核性が問題となることからピリダジン誘導体の性質を調べることとし,分子設計によって求核性を自在に変動させることができるかどうかを検討することにした。本来は,深追いをするつもりはなかったが,DMAPとの比較で塩基性や求核性や触媒能に関して興味深い結果が得られた。多様な研究例があるピリジン誘導体とは異なり,アミノ基置換ピリダジンについての検討の前例が1つしかなく,しかもそれがネガティブであった点からすると,本来の協働効果と直接関係がないが,有用な知見が得られたと言える。そして,この結果についてはまとめることができ,論文投稿(J. Org. Chem.)に至っている。このように,本来の協働効果についての検討に至っていない点では,「やや遅れている」と見なすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
弱いLewis塩基性部位と弱いLewis酸性部位をもつ化合物として,予備的にテトラキス(o-ピリジル)スタナン(o-Py4Sn)を検討し,無水酢酸と第2級アルコールとのエステル化反応で,ピリジンのみの場合と比べて著しい活性化能があり,DMAPに迫るものであることが明らかとなった。ピリジンの数と触媒能の間に相関が存在する可能性があることからピリジン置換基を1~3個もつ誘導体を合成し,その触媒能を検討する。また,アルコールと(t-BOC)2Oの反応でDMAPを用いると反応させるアルコール2分子をもつ炭酸エステルが副生することが知られているが,o-Py4Snの立体効果によりそれが抑制でき,酸が発生しないために触媒が分解しないと考えられることから,DMAPに勝る触媒となりうるのでその検討を行う。さらに,塩基触媒によってアシル基が中央に転位しやすいことから困難とされているグリセリンの選択的アシル化への応用を試みる。そして,Michael付加を経たシクロプロパン化反応の触媒としての有用性も検討する。 触媒についても,分解が抑えられると考えられる同族のケイ素を導入した化合物について検討する。ケイ素の場合には,Lewis酸性が不十分な場合,DMAPを導入した化合物や高配位典型元素化合物に対して抜群の安定化効果があるMartin配位子やピリジンをベースとしたMartin配位子類似の新規配位子を有する化合物を検討する。これらでは,アセチル基やCO2との反応によって5配位の三方両錐構造を安定化できる構造となっているため,5配位化が促進されると期待できる。特に,CO2捕捉体においては,CO2部位に形式電荷が乗らないため,CO2捕捉剤としての期待が大きい。
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Causes of Carryover |
交付金を1年間通して使用できるように計画し,なるべく無駄遣いがないように節約しながら使用した結果,残金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の研究計画を変更せずに残金を利用する。主には,実験用試薬や溶媒,実験器具の購入,学会用旅費に充てる。
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Research Products
(8 results)