2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K05430
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
林 実 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (20272403)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機リン化合物 / 蛍光化合物 / ホスフィニン / 合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はまず,対称型ホスフィニンを基盤とする機能分子設計の基本指針を確立を目指した検討を進めた。 研究実施前の時点で4位置換基の電子効果が物性に大きく影響することが明らかとなっていたが、これまで4位置換対称型ホスフィニンの一般的合成法は確立されていなかった。そこで、共役置換基(アルケニル基,アルキニル基など)やヘテロ原子を4位に導入することを目指し、各種置換基導入の検討を行った。多様な誘導体合成のため、4位無置換ホスフィニンから得られる4位臭素化体及び4位ホルミル化体を前駆体として用いた置換基導入を検討した。 4位臭素化体と末端アルキンによる薗頭カップリング反応は適切な触媒系を用いることで円滑に進行し、各種アルキニル置換ホスフィニンが収率よく得られた。また、4位ホルミル化体のWittig反応により、各種アルケニル置換ホスフィニンも得ることができた。一方、4位臭素化体の触媒反応としてパラジウム触媒アミノ化を試みたが反応は進行せず、窒素置換体はこの方法では得られなかったが、4位無置換体の求電子的ニトロ化と続く還元により、4位アミノ化体を得ることができた。また、触媒的カップリングにより、4位臭素化体のジボロン誘導体を用いるホウ素化で4位ホウ素化体が、ホスフィンスルフィド誘導体を用いるP-Cクロスカップリングで4位ホスフィン誘導体が、それぞれ得られた。また、4位臭素化体、4位ホウ素化体を用いるクロスカップリングにより、芳香族誘導体が得られることも確認できた。 このようにして得られた4位置換対称型ホスフィニン誘導体に関して、紫外可視吸収及び蛍光スペクトルを測定し、置換基の構造的・電子的影響による発光波長変化と量子収率への影響について、一連の化合物の系統的な測定と量子化学計算による検討を加えて、今後の分子設計に必要な構造物性相関にかかる知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初の平成27年度研究計画において計画していた、対称型ホスフィニンへの置換基導入手法精査と、複数の方法論による置換基導入法開発について検討した結果、薗頭カップリングによるアルキニル誘導体、Wittig反応によるアルケニル誘導体の合成法を確立できた。また求電子置換反応とクロスカップリング反応を駆使し、アミノ化体、ホウ素化体、ホスフィン誘導体、芳香族置換誘導体の合成に成功しており、当初計画通り、順調に複数の方法論による置換基導入法が開発できている。 また、4位選択的な置換基導入反応の開発成功に伴い、多様な電子状態の対称型4位置換誘導体を合成・入手することができたことから、実測の紫外可視吸収及び蛍光スペクトルと、量子化学計算を交えて評価することができ、構造(置換基の電子的・構造的影響)の発光波長・量子収率への影響について、当初の予定通り、今後の分子設計に必要な構造物性相関にかかる知見を得ることができた。 これらのことから、本研究課題は、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究が概ね計画通り順調に進展していることから、今後は、未だ達成できていないヘテロ芳香族置換体や他のヘテロ原子誘導体の合成を引き続き検討していくとともに、申請当初の平成28年度研究計画に従って、昨年度の検討で明らかとなった構造活性相関の知見をもとに、計算化学的手法を併用しながら、高発光性・長波長発光性・環境応答性・各種分子/イオンセンシングなどの機能を発揮する蛍光機能性分子開発につなげるため、各種官能性置換基選択を駆使して適切な分子設計を進め、実際に合成・検討していく予定である。また、昨年度研究の途中で明らかとなった、2、6位置換基の発光波長への影響についても、申請時の予定を超えて検討を加えていく予定である。
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Causes of Carryover |
経費のほぼ全てが試薬類を中心とする物品費と、その他に分類されている学内共同利用施設(分析機器類)使用料であり、当該年度内に99.9%以上を使用しており、特に意図的な繰り越し理由はなく、小さな試薬購入にも満たない端数のみが残ったため、無駄に使用することなく次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分については、本年度分と合わせて、有効に使用していく。
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Research Products
(3 results)