2017 Fiscal Year Research-status Report
ドナーアクセプター型シクロオクタテトラエン誘導体の合成と光機能性有機材料への応用
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15K05440
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
折田 明浩 岡山理科大学, 工学部, 教授 (30262033)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 可視光色素 / クリック反応 / 末端アセチレン / ドナー / アクセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
ドナーアクセプター型色素の合成過程において、比較的単純な骨格で可視光を吸収できる色素位を見出した。更なる官能基化の手掛かりとなる官能基の導入法の開発および、配向基等の導入法を開発した。また、これら一連の作業を簡略化することにも成功しつつある。具体的には、ドナーアクセプター型可視光色素に末端アセチレンを導入し、これを手掛かりに、クリック反応により配向基を導入する。この時、配向基にも末端アセチレンを導入しておき、ドナーアクセプター型色素、配向基、およびジアジドプラットフォームとをワンショットで連結することを検討した。ここに含まれる2種類のクリック反応の相対的な反応速度を比較し、反応剤の仕込み比率をチューニングすることにより、望む1:1:1付加体の収率を向上させる手掛かりを得た。また、色素の官能基化には様々な配向基を導入できるよう検討を行った。特に色素を生理活性部位へターゲッティングするためには糖類の導入が有効であることことから、糖の導入後に他の官能基を損なうことなく、脱保護する方法も検討した。この反応では有機スズ触媒が極めて有効であり、簡便な操作と温和な反応条件下で糖の脱保護を行うことができた。また、3次元的に拡張したドナーアクセプター型色素の誘導体を更に合成し、メカノクロミズム等新たな機能発現に繋がる現象をシステマティックに調査しており、X線構造回折を用いた時間分解型の解析等も検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ドナーアクセプター型色素の新たな利用方法、応用展開として官能基化およびその簡略化に取り組んだ。可視光吸収色素を合成し、ここへ更なる官能基化の手掛かりとなる官能基を導入した後に、配向基の簡略化導入法を開発した。すなわち、ドナーアクセプター型可視光色素に末端アセチレンを導入し、ドナーアクセプター型色素、配向基、およびジアジドプラットフォームとをワンショットで連結した。ここに含まれる2種類のクリック反応の相対的な反応速度を比較し、反応剤の仕込み比率をチューニングすることにより、望む1:1:1付加体の収率を向上させる手掛かりを得た。この研究の過程で、生成物が銅触媒に配位することで、反応が加速するような現象が一部で確認された。過去の研究から、トリアゾール生成物が銅触媒の安定化に有効であるとの報告例もあり、電子チューニングを利用した反応制御の可能性が見えてきた。新たな反応制御法の端緒を掴んでおり、概ね順調に研究が進展したものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Bioorthogonalな官能基を含む様々な機能を連結・集積化するのに有効なクリック反応を用いて、ドナーアクセプター型色素の官能基化を検討した。特に色素を狙った場所へ運ぶことを目的に、配向基の導入を検討した。また、複数のクリック反応をワンショットで行い、一気に複数の官能を導入する手法も開発した。この過程で、生成物が銅触媒の配位子として作用し、反応を加速することを見出した。引き続き、配位子上の置換基や電子的効果が配位子の機能に与える影響を調査するとともに、より有効な配位子を探る予定である。配位子の電子的制御による反応性制御は新しいコンセプトであり、この反応のメカニズム解明を通じて、実用的な反応の開発へ繋ぎたい。また、3次元的に拡張したドナーアクセプター型色素の誘導体を更に合成し、メカノクロミズム等新たな機能発現に繋がる現象をシステマティックに調査する予定である。これらは、いずれも有機合成・有機化学分野に新しい展開や応用を導く新概念であり、今後の発展が大いに期待される。
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Causes of Carryover |
官能基の集積化で頻繁に利用されるクリック反応の研究過程で、これまでに見られたことのない電子的効果および加速効果が観測された。より簡便かつ実用的な官能基集積化法を確立できる可能性があることから、本反応のメカニズム解明、および本方法論の適用範囲を探るために次年度への研究延長を申請した。
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Research Products
(18 results)