2017 Fiscal Year Research-status Report
シライミンおよびホスファシレンを配位子として有する電子欠損型錯体の創製と反応性
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15K05443
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
岡崎 雅明 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (20292203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 俊 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (20733132)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小分子活性化 / シライミン / ホスファシレン / 有機金属化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素と窒素の間に二重結合をもつイミンは、有機合成化学における重要かつ基礎的な化合物であり、種々の反応における原料基質として広く用いられている。一方、炭素あるいは窒素を同族の重い元素に置き換えた化学種、シライミンおよびホスファシレンは不安定であり、14族元素あるいは15族元素上に嵩高い置換基を導入することで合成される。本研究では昨年度までに引き続き、これら不飽和分子を遷移金属上で準安定化させることで、ケイ素、窒素、リンなど典型元素をルイス酸活性点とする反応場の構築を目指し、反応性研究を行った。 架橋水素を2つ有するシライミン配位ルテニウム二核錯体とtert-ブチルイソシアニドとの反応を検討したところ、シライミン由来のケイ素および窒素部位は、アミノシランとして解離し、架橋イソシアニドおよび末端イソシアニドを有するルテニウム二核錯体が得られた。アミノシランは別途合成することで同定し、錯体は単結晶X線構造解析により構造を決定した。この反応は、架橋水素がシライミン部位へ転位する素反応を仮定することで説明でき、興味深い反応といえる。 これまでLiPHR(SiR2H)を単離して、クロリド錯体との脱塩反応および酸化的付加反応により、ホスファシレン配位錯体の合成を行ってきた。今回、この配位子前駆体を系中で発生させ単離することなく用いることで、収率の向上と再現性の改善に成功した。また、MeOTfとの反応により、ホスファシレン配位子は、リン部位がメチル化を受けることで、ホスフィノシリル配位子へと変換されることがわかった。今後、単結晶X線構造解析により、構造を明らかにしていく予定である。ホスフィノシリル錯体の合成例はほとんどなく、ホスフィド(シリレン)錯体としての極限構造を想定することができることから、高い反応性の発現が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回、シライミン架橋ルテニウム二核錯体の反応性について検討し、研究実績の概要にて述べたとおり、架橋水素がシライミン配位子へ転位する素反応を観測することに成功した。また、この反応において、シライミン部位はアミノシランへと変換されることも明らかにした。これらの研究成果は新規性が高いといえる。電子欠損型シライミン配位ルテニウム二核錯体への展開が残されているが、おおむね順調に進展した。 14電子型のシライミン配位チタン単核錯体の合成と反応性研究に取り組み、一定の成果を得てきた。この反応を触媒反応などに展開するためには、反応場において、捕捉した小分子のさらなる化学修飾が必要であり、この点においてやや遅れが生じた。当初の計画よりさらに発展させ、12電子型錯体の発生に取り組んだが、そのような化学種の発生を示唆する直接的な実験的証拠を得るまでに至らなかった。この点については、今後の課題といえる。 ホスファシレンが金属にside-on型で配位した例はほとんどなく、再現性よく高収率な合成法の確立が必要不可欠であった。今回、そのような合成法の確立に成功したため、今後、反応性研究などへ展開が期待できる。ホスファシレン錯体上で捕捉した小分子の化学修飾に関しては想定以上に時間を要し、やや遅れが生じた。また、ホスファシレン配位子をメチル化することで、ホスフィノシリル配位子へと変換することに初めて成功し、当初の予想を超えて、新しい反応場の構築に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.今回確立した合成法を元に、様々な金属を用いて、シライミンおよびホスファシレン配位錯体の合成を行い、金属の違いが及ぼす反応性への影響を明らかにする。 2.これまで、配位子前駆体の合成において、シライミンの窒素、ホスファシレンのリン上に嵩高い置換基を導入している。今後は、置換基を立体的に小さいものへと変更する。 3.ケトンの類縁体であるシラノンおよびシランチオンにも、本研究を展開する。 4.様々な外部刺激を与えることで、金属上で準安定化されたシライミンおよびホスファシレンを解離させ、その反応化学を検討する。 5.これまでに得られた反応性研究の成果を踏まえて、典型元素を活性点とするルイス酸ールイス塩基協奏反応場を構築し、触媒反応へと展開する。
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Causes of Carryover |
シライミン、ホスファシレンなど不飽和ケイ素化学種が配位した錯体を用いることで、小分子の捕捉活性化に成功したものの、捕捉した小分子の化学修飾について時間を要した。また、年度末にて錯体化合物のキャラクタリゼーションに必要不可欠な単結晶X線装置および質量分析計の修理が必要となり、高度に配位不飽和な単核チタン錯体の研究の進展に遅れが生じた。 生じた次年度使用額は本研究の遂行に必要不可欠なガス精製装置付きグローブボックスの保守、試薬類および器具類など消耗品、仙台で開催される錯体化学討論会での研究成果発表旅費に充当する。
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Research Products
(12 results)