2019 Fiscal Year Annual Research Report
Magnetic analysis and anisotropy control of polynuclear T-ground-term transition metal complexes
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15K05445
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
崎山 博史 山形大学, 理学部, 教授 (20253396)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スピン軌道相互作用 / 磁化率・磁化同時解析 / 磁気解析ソフトウェア / 多核コバルト(II)錯体 / 一次元鎖状錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
T項基底の金属錯体は、スピン軌道相互作用のため、対称性に依存した特異な磁気挙動を示す。正八面体型単核錯体については1960年代に理論が確立したが、多核錯体や対称性が異なる錯体については難問が残されていた。難問の一つは、対称性により基底T項の分裂だけでなく励起項の分裂をも考慮しなければならない場合があることであったが、最終年度にこの問題の一部を解決することができた。最終年度の成果として、2T2項基底の錯体において励起項をも考慮した理論式を導出しバナジウム(IV)錯体の磁気解析結果を論文発表することができた。この理論式は、正八面体型以外の対称性で軌道角運動量が残る場合に適用可能である。励起項が直接かかわる基底T項錯体の磁性はこれまで解析不可能であったが、今回の成功はこのような磁気解析を可能にする点に大きな意義がある。 最終年度のもう一つの成果は、4T1項の一次元鎖状錯体の磁化率の理論式を導き、一次元高スピンコバルト(II)錯体の磁気解析に成功したことである。完全な永年行列方程式を解く方法では一次元錯体を取り扱うことができないが、単核錯体のゼーマンエネルギーを用いて一次元錯体の磁性を表現することで理論式を導くことができた。 研究期間全体を通して、それまで導出されていなかった3T1項と5T2項のアキシャル対称での理論式を導出し論文発表した。これによって、すべてのT項の理論式が導出できたことになる。単核T項錯体の理論式を導く意義は、結果を組み合わせることで、自在に多核錯体に拡張できることである。この方法は、計算コストの点で行列方程式を解く方法よりも格段に勝っており、核数の多い多核錯体の磁気解析に力を発揮できる点に最大の意義がある。本研究でおこなった磁化率・磁化同時解析ができる磁気解析ソフトウェア開発にも価値があり、多核コバルト(II)錯体をはじめとする種々の磁気解析に成功した。
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