2016 Fiscal Year Research-status Report
ガラシクロペンタジエン誘導体の合成、構造、反応性、光特性評価
Project/Area Number |
15K05446
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
村岡 貴子 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (40400775)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ガラシクロペンタジエン / 配位子 / 結合切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シクロペンタジエニルカチオンと等電子構造を有する高周期類縁体であるガラシクロペンタジエンを合成し、その構造、反応性、および光特性について評価することを目的とする。これまでに、Fe-Ga結合を有するジクロロガリル鉄錯体とジルコナシクロペンタジエン誘導体との反応により、ガラシクロペンタジエニル鉄錯体の合成に成功している。この錯体は、ガラシクロペンタジエンのGa上に遷移金属フラグメントを導入した初めての錯体である。得られた錯体の構造をX線結晶構造解析により明らかにし、鉄とガラシクロペンタジエン配位子間の相互作用はFe-Ga結合のみである、ハプト-1型配位であることを見出した。この錯体を光照射し、他の配位子を引き抜くことでハプト-5型錯体への変換を試みたが、目的の錯体は得られず、原料錯体は分解した。そこで、ガリウム上に遷移金属フラグメント以外の置換基を導入したガラシクロペンタジエンを合成し、配位不飽和遷移金属フラグメントとの反応によって、ハプト-5型錯体の合成を試みた。14電子ロジウム錯体との反応では、ガラシクロペンタジエンがハプト-4型で配位した錯体が最初に得られ、その錯体から配位子引き抜き反応によってハプト-5型錯体への変換を試みたが、Ga-C結合の切断が生じハプト-4型ブタジエン錯体が生成することが分かった。さらに、12電子タングステンフラグメントとの反応では、ガラシクロペンタジエンがタングステンに配位した錯体は得られなかったが、ガラシクロペンタジエンの骨格組み換え反応が生じガラシクロノナテトラエンが得られた。現在、ガラシクロノナテトラエンの生成過程について検討を行っている。また、異なる経路でのハプト-5型錯体の合成を目指して、その前駆体であるガラシクロペンタジエニルアニオンの合成を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガラシクロペンタジエンは我々が研究に取り組む以前は、合成例が8例しかなく遷移金属の配位子として応用する研究は1例しかなかった。同族のホウ素を含むボラシクロペンタジエンは、遷移金属の配位子として利用され多くの錯体が合成されている。本研究では、初めてのハプト-1型鉄錯体の合成に成功し、さらにハプト-4型ロジウム錯体が得られることを見出した。また、タングステン錯体との反応で、ガラシクロペンタジエンニ分子による骨格組み換え反応が生じることが分かった。このように、これまでに報告例のない新規反応を複数見出しており、研究は進展していると判断している。 他方、フェロセンの高周期類縁体であるハプト-5型ガラシクロペンタジエン錯体の合成はいまだ達成されておらず、現在複数の反応経路での合成を試みているが、目標達成に向けて研究を継続して推進していく必要がある。 さらに、当初の目的として掲げている光特性評価についての検討が十分に行えていない現状がある。そのため、今後は光特性評価に関する検討を実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
フェロセンの高周期類縁体であるハプト-5型ガラシクロペンタジエン錯体の合成に向けて、次にあげる合成経路を検討する。すなわち、1)ハプト-1型ガラシクロペンタジエニル錯体の配位子置換反応、2)12電子遷移金属フラグメントへのGa-X結合の酸化的付加反応、3)ガラシクロペンタジエニルアニオンとハロゲン化遷移金属フラグメントとの求核置換反応である。 経路1)は、これまでに鉄錯体を用いて検討したが目的錯体は得られず、反応条件下、錯体は分解することが分かった。そこで、金属ーガリウム結合がより強くなると考えられる、高周期のルテニウム錯体を合成し、ハプト-5型錯体への変換を試みる。 経路2)では、骨格内の元素がすべて炭素であるハプト-5型シクロペンタジエニル錯体の合成法を参考に、Ga-H結合やGa-Si結合を遷移金属に酸化的付加させることで、一段階でのハプト-5型錯体の合成を検討する。 ガリウムと同族のボラシクロペンタジエンは、シクロペンタジエン骨格上にかさ高い置換基を導入し、ホウ素上に強い電子供与性を示すルイス塩基を導入することで、ボラシクロペンタジエニルアニオンの合成に成功している。一方、その高周期類縁体であるガリウムを含むガラシクロペンタジエニルアニオンの合成例は知られていない。そこで、経路3)ではシクロペンタジエン骨格にかさ高い置換基を導入し、強いルイス塩基をガリウム上に配位させることでガラシクロペンタジエニルアニオンの合成を検討する。対カチオンの効果について明らかにするため、リチウム、ナトリウム、カリウムを用いたアニオン合成を試みる。 ガラシクロペンタジエンの光特性評価を行うため、ガリウム上にかさ高い置換基を導入した、単量体として存在するガラシクロペンタジエンを合成し、その吸収および発光スペクトルを測定する。
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Causes of Carryover |
特に、ガラシクロペンタジエン誘導体の光特性評価に関する研究について、当初予定していた実施時期から平成29年度にずれ込んでおり、そのための研究資金を確保しておく必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に、複数のガラシクロペンタジエン誘導体を合成し、光特性評価を実施するにあたり、各種試薬の購入や測定にかかる費用を捻出する必要があり、それらの費用に充てる。さらに、得られた成果を学会等で発表するため、出張費等に充てる。
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Research Products
(8 results)