2015 Fiscal Year Research-status Report
先端的時間分解分光で観測する金属錯体会合体の構造変形ダイナミクス
Project/Area Number |
15K05447
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩村 宗高 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 講師 (60372942)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 金原子間相互作用 / 時間分解分光 / 光誘起構造変化 / フェムト秒化学 / 発光性金属錯体 / 共存イオン効果 / 光エネルギー変換 / XAFS |
Outline of Annual Research Achievements |
米国アルゴンヌ国立研究所において、ジシアノ金水溶液に対する時間分解X線分光実験を行った。溶液の濃度、励起光強度、共存イオンなどを注意深く選定して計測したが、現条件での最適条件においても励起状態と基底状態の差スペクトルを十分なSN比で得ることができなかった。ここから、試料調整段階で、観測対象となる会合種の濃度をもっと高くするなどの工夫が必要であることが分かった。 この知見を基に、より会合度の高くするべく、新しい配位子を合成するための試薬を購入し、合成実験をはじめているところである。 また、米国にて、関連領域の第一人者であるメイン州立大学のパターソン教授の研究室を訪問し、情報交換の末結晶系で共同研究を開始することになった。メイン州立大から提供されたジシアノ金イオンがドープされたハロゲン化アルカリ金属結晶の発光寿命温度依存性から、溶液では難しい2量体、3量体の緩和メカニズムに関する熱力学的パラメータを得ることができた。 4級アミンを共存させることで、会合度、および発光寿命を著しく増大させることを見出し、この成果に関する論文を目下投稿中である。また、4級アミン存在下におけるジシアノ金会合体のダイナミクスを、可視・紫外過渡吸収分光で計測したところ、3量体のみならず、4量体、5量体の振動に伴う信号の時間領域におけるゆらぎを計測・帰属することができた。各会合種のダイナミクスを分光学的に分離し、それぞれの構造変型プロセスを個別に記録することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間分解X線分光においては、当時の報告例(Nature 2015, 518, p385)より、共存イオンなどの独自の工夫をすることで、各段によい条件での測定を行ったが、期待していたほどの計測精度は得られなかった。これに関しては改善策を検討中である。 一方、可視・紫外の実験では、予想をはるかに超える強い振動に関する信号が得られた。このため、溶液中に共存する各種会合体のダイナミクスに関する信号をよく分離すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
・新たな配位子を合成し、高い収率で会合体を作る。 ・共存イオンや溶媒効果によるダイナミクスの変化を計測する。
|
Causes of Carryover |
アルゴンヌ国立研究所で行った時間分解X線分光実験に置いて、期待された信号強度が得られなかった。このことから、測定系の再構築が必要であることが明らかとなった。そこで計画していた計測実験を中途で切り上げ、予算の一部を翌年からの合成実験に回すことにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
吸収強度は、溶液中における会合体の濃度を大きくすることで大幅に改善することが期待される。そのため、新たな配位子を有する金、白金などの重金属錯体を合成し、その光励起ダイナミクスを計測する。
|
Research Products
(8 results)