2017 Fiscal Year Research-status Report
分子性多核金属反応場でのN-H還元的脱離反応の開拓と機構解明
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15K05459
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松坂 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50221586)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カーバイド / ルテニウム / N-ヘテロ環カルベン / 銅 / 銀 / 金 |
Outline of Annual Research Achievements |
2核ルテニウム錯体上でのN-H結合切断反応を経て生成する架橋メチリジン錯体の反応性に関して詳細に検討した。その結果、 [(Cp*Ru)2(μ-NtBu)(μ-CH)][BF4] (Cp* = η5-C5Me5) に対して、CuCN、AgOTfまたはAuCl(SMe2)の存在下で2当量のKN(SiMe3)2を反応させることにより、三方平面型架橋カーバイド配位子を有する新規な混合金属3核錯体[(Cp*Ru)2(μ-NtBu)(μ3-C)M{N(SiMe3)2}] (M = Cu (4), Ag (5), and Au (6))が得られることを見出し、錯体4、6についてはX線解析により構造の詳細を明らかにした。これらの化合物中の金属―カーバイド炭素結合はN-ヘテロ環カルベン配位子(NHC)を有する錯体(NHC)M{N(SiMe3)2} (M = Cu and Au)における金属―カーバイド炭素結合ときわめて類似しており、 [(Cp*Ru)2(μ-NtBu)(μ-C)] フラグメントがNHC配位子に対応するものであることが示唆された。錯体4をC6H3(OH)-But2-2,6と反応させると、アミド配位子のプロトン化を経る配位子交換反応が進行し、[(Cp*Ru)2(μNtBu)(μ3-C)Cu(OAr)] (7; Ar = 2,6-tBu2C6H3)が生成した。錯体6についてもX線解析を行い、構造の詳細を明らかにした。さらに、[(Cp*Ru)2(μ-NtBu)(μ-C)] フラグメントの電子供与脳と立体的なかさ高さに関して計算科学的手法により解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2核ルテニウム錯体上でのN-H結合生成または切断を経て、一連の新規化合物を合成できることを見出し、それらの構造と反応性の詳細を明らかにするができた。これらの成果は、2核ルテニウム錯体上でのN-H結合生成または切断反応に関する理解を分子レベルで深めることに寄与することができるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の研究の過程で、支持配位子としてCp* (h5-C5Me5)の代わりにCp (h5-C5H5)を有する一連の2核ルテニウム錯体を合成する新ルートを見出すことができた。支持配位子の電子的及び立体的性質が金属錯体の機能に深く関与することから、Cpを支持配位子とする錯体がCp*を支持配位子とする錯体と比較してどのような類似点と相違点を有するのかを分子レベルで解明することに取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度の研究の過程で支持配位子の異なる新たな錯体が合成できることを見出したため、次年度にそれらの構造と反応性の詳細を検討する。
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Research Products
(12 results)