2016 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素の回収・濃縮および還元の両機能を併せ持つ金属錯体光触媒系の開発
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15K05461
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
森本 樹 東京工科大学, 工学部, 講師 (40452015)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 二酸化炭素還元 / 二酸化炭素捕捉 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに得られていた、レニウム錯体による二酸化炭素(CO2)の捕捉機構を考慮して、従来の系で用いられてきたトリエタノールアミンのような、CO2捕捉を補助する添加剤を必要とせず、錯体自身が積極的にCO2を捕捉できる錯体を新たに設計・合成した。具体的には、レニウム中心近傍にヒドロキシ基が位置するように、レニウムに配位する芳香族ジイミン配位子を修飾した新規錯体を数種合成・同定し、そのCO2捕捉能とCO2還元光触媒能を検討した。単結晶X線構造解析や核磁気共鳴分光等から、溶液中・固体中において分子内にCO2分子を捕捉できる距離にヒドロキシ基が位置していることが確認できた。実際に、塩基性溶液中においてCO2を通気すると、室温条件で錯体中にCO2分子が取り込まれることが赤外吸収スペクトルから明らかになった。これらの錯体を光触媒としてCO2還元反応を行ったところ、CO2の還元生成物であるCOの生成量は、レニウム中心周辺に配置したヒドロキシ基の数や位置に大きく依存することがわかった。これは、錯体の1電子還元種の蓄積の程度や中間体として生成する錯体の種類が、レニウム中心周辺のヒドロキシ基の数、位置、種類で変化することに起因することを見出した。さらに、ヒドロキシ基の導入によってCO2捕捉能が錯体に付与される一方で、それによる電子的効果が有意に働くことで、錯体の電気化学的性質が大きく変化し、光触媒能が左右されていることがわかった。今回得られた知見から、CO2捕捉能を維持しながら、CO2還元能を高める光触媒の設計指針が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通りに、二酸化炭素捕捉のための添加剤を特に必要としない新規金属錯体を合成・同定することに成功し、さらに、それらの錯体に二酸化炭素捕捉能と二酸化炭素還元能の両方が備わっていることが確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果をもとに、特別な添加剤を用いずに二酸化炭素を捕捉しながら、低濃度の二酸化炭素も高効率に還元できる光触媒系を実現する。
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Causes of Carryover |
今年度に購入を予定していた機器を用いて実施予定の実験が、安価な器具・消耗品を用いた代替法で実施することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初から計画していた消耗品等に加えて、次年度に開発する光触媒系の性能評価の迅速化に資する装置(励起状態追跡装置)と物品を追加で購入する予定である。
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