2015 Fiscal Year Research-status Report
光触媒作用により自己表面修飾した酸化チタンナノ粒子の吸着・分解機能
Project/Area Number |
15K05472
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
錦織 広昌 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00332677)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光物性 / 光触媒 / ナノ材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化チタン自身の光触媒機能を利用した表面ゾル-ゲル法により、酸化チタンナノ粒子表面のごく一部を、光により活性化し表面反応を促進することで、極性物質の吸着性に優れたシリカまたはシリカアルミナ超微粒子により修飾する新しい技術を開発するための研究に着手した。平成27年度は、超微粒子形成過程と有機物質の分解反応機構の解明をめざし、以下の項目について実験を行った。 1. シリカおよびシリカアルミナ修飾酸化チタン光触媒薄膜の作製 ガラス基板上に酸化チタン前駆体ゾルをコーティングし、500℃で焼成することにより酸化チタンナノ結晶薄膜を作製した。Siアルコキシドの溶液に上記のチタニアナノ結晶薄膜を浸漬し、常温で紫外光照射を行い、シリカ-酸化チタン複合光触媒薄膜を得た。紫外光照射強度および時間を変えた条件で複合体を合成した。また、シリカアルミナ-酸化チタン複合光触媒薄膜も作製した。 2. 触媒のナノ構造の観測 上記薄膜の電子顕微鏡観察、XRD測定、赤外吸収(IR)スペクトル測定を行い、作製条件による酸化チタン表面上のシリカの粒子径、酸化チタン表面への分散性を含むナノ構造を明らかにし、その形成過程を検討した。 3. 光触媒分解の反応解析 合成した複合触媒を用い、酸素溶存溶液中における植物性高分子(デンプン)の光触媒分解実験を行った。溶液中のIRスペクトル分析により、デンプンの分解過程を観測した。 <研究成果>作製したシリカおよびシリカアルミナは粒径数nm程度のアモルファス粒子からなることがわかった。強度100 mW程度、時間30分程度の光量の紫外光照射により、はっきりとした超微粒子の生成を確認することができた。酸化チタン薄膜表面に吸着剤となるごく微量のシリカおよびシリカアルミナ超微粒子を形成することにより、デンプン分子の吸着と光触媒分解を促進し、光電流の発生効率を向上させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シリカおよびシリカアルミナ超微粒子の形成過程と有機物質の分解反応機構の解明をめざして研究を行った結果、以下の成果を得た。 ①適切な光量の紫外光照射により、酸化チタン薄膜表面に、粒径数nm程度のアモルファス構造のはっきりとしたシリカおよびシリカアルミナ超微粒子を作製することができた。②酸化チタン薄膜表面に高性能吸着剤となるごく微量のシリカおよびシリカアルミナ超微粒子を形成することにより、デンプン分子の吸着と光触媒分解を促進することができ、光電流の発生効率を向上させることができた。③デンプンの分解により中間生成物としてギ酸が観測し、分解機構をある程度推定することができた。 以上より、予定していたとおりに研究を推進し、一定の成果を得ることができたため、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は光燃料電池電極の電子移動機構の解明をめざして、以下の項目についての研究行う。 1. シリカまたはシリカアルミナ修飾酸化チタン電極の作製(4月~6月) 平成27年度と同様に様々な条件で、シリカおよびシリカアルミナ修飾酸化チタン薄膜をITO透明電極ガラス板上に作製し、シリカおよびシリカアルミナ-酸化チタン複合光触媒電極を得る。 2. 電極の電気化学測定および反応解析(項目1へのフィードバックを含む 5月~3月) 作製した複合電極を燃料物質、電解質、溶存酸素を含む溶液に浸漬し、蛍光分光装置を光源として用いて、電気化学測定装置により、光照射下での電流電圧特性および光電流アクションスペクトルを測定する。平成27年度と同様に、燃料物質分解の定量的な反応解析を行う。光電流値と生成物の定量の結果より、電子移動特性・エネルギー変換効率を評価する。
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