2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノポーラス液晶を鋳型とする機能性ナノ周期組織の創製
Project/Area Number |
15K05473
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河野 慎一郎 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (10508584)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液晶 / 超分子 / マクロサイクル / ナノ空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶の中に、特定のサイズや形状、化学的性質を持つ空間を創出することすることで、外部刺激に応じて可逆的に応答するソフトなポーラスマテリアルとして新規な機能性材料を生み出すことが期待される。本研究では、カラムナー液晶中にディスクリートな空間を形成する超分子構造を基本ユニットとして、基板上に精密かつ高度に配向した液晶性ナノ空間を構築する。これまでの研究で得た0.5 ~ 2 nmのサイズの空孔を持つ大環状化合物が、熱量測定や偏光顕微鏡観察、斜入射X線回折実験から、カラムナー液晶性を示すことを明らかにした。これらの液晶性大環状化合物は、温度に対して可逆的に相変化し、組織構造を変えるサーモトロピックなカラムナー液晶であり、基板上で数百 μmにわたり大環状化合物が一次元組織化したナノチャンネル構造を形成することを明らかにした("Columnar Liquid-Crystalline Metallomacrocycles", S. Kawano, Y. Ishida, and K. Tanaka, J. Am. Chem. Soc. 137, 2295 (2015))。また、これらの液晶性大環状化合物はその環構造骨格に配位子となるサレン(またはサルフェン)配位子を持っており、様々な金属イオンを導入することができる。いくつかの多核型大環状金属錯体が、金属イオンの種類によって、液晶性や集積構造を制御できることを見出した。また、モデル化合物を用いた単結晶構造解析からも、大環状化合物の環状骨格が遷移金属イオンの種類やサイズによって、分子レベルで平面性を向上させたことが明らかとなり、それによりマクロな分子集合体である液晶の物性を制御することに成功した(S. Kawano, T. Hamazaki, A. Suzuki, K. Kurahashi and K. Tanaka, 論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、1.4 nmのサイズの内部空孔を持ち、カルバゾールとサルフェンからなる大環状化合物を合成し、サーモトロピックなカラムナー液晶性を示すことを明らかにした。従来のディスコチック液晶と異なる分子構造を持つメソゲン部位として、ナノレベルの空間を持つ大環状化合物が、広いドメインで高配向したサーモトロピックなカラムナー液晶相を形成した極めて珍しい例である。初年度までの研究で、この液晶性大環状化合物について、熱量測定や偏光顕微鏡観察、斜入射X線回折実験を行い、この液晶分子が、室温を含む広範囲な温度領域で、4つのレクタンギュラーカラムナー液晶相を形成することを明らかとした。しかし、従来の測定方法では、この4つの液晶相中の詳細な分子の集積構造について、明らかにされていなかった。そこで、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)での温度可変固体13C NMR測定を行った結果、大環状化合物からなるカラムナー液晶が、液晶構造としてアルキル鎖が運動性の高い状態である一方、環状メソゲン部位は、室温ではNMRのタイムスケールに比べて遅い運動をしており、高温における相転移と共に環構造が動き出していることが明らかとなった。このような動的かつ柔軟なナノ空間を持つ材料として大変興味深い結果であるといえる。 また、これらの大環状化合物の熱的な挙動や分子集積構造は、大環状構造の周辺に位置するアルキル鎖の構造によって、大いに影響を受けることが明らかとなった。すなわち、特定のアルキル鎖の構造を持つ大環状化合物が、平滑な平面基板上で、二次元結晶性ネットワークを形成することが分かった。これらは、尾上順教授と中谷真人准教授(名古屋大学工学研究科)との共同研究において走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いた実験から明らかにされたものであり、本研究を遂行する上で、偶然見つけられた極めて重要な発見である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、液晶性大環状化合物によって形成するナノ周期構造体を鋳型として、機能性分子を精密に配列制御し、そのナノ周期構造を活かした機能化を目指すことである。それに当たり、本研究では、今後(1)液晶性大環状化合物の多様化、(2)固体NMR等の特殊な測定方法を駆使したナノ材料としての物性評価、(3)偶然発見した産物である、二次元ナノ周期構造を活かし、それらを鋳型として機能性分子の配列を実現するために、研究を推し進める。(1)に関しては、効率の良い自己組織化を利用する環合成を利用しているため、環のサイズや、様々な機能性金属錯体を基本ユニットとした大環状化合物を、既に数種類以上合成することに成功している。また、大環状金属錯体を軸位方向(環の面に対して垂直方向)に一次元に連結させたり、直線的な二座配位子を用いて巨大なナノ空間を持つケージ型分子のなどの高次ナノ空間を合理的に構築することも可能となっている。現在これらの詳細な物性評価を行っている。(2)に関しては、固体NMRに関する学会や研究会に積極的に参加しており、技術者や共同研究者との交流や意見交換により、液晶を用いた新規かつ柔軟なナノ空間の本質を追究する研究を引き続き行う。特に、標識化した元素を利用した多次元固体NMRや重水素を用いた分子運動を利用した実験を検討する予定である。(3)に関しては、二次元ナノ空間を周期的に配列することに成功しており、将来的に極めて多様かつ重要な知見が得られる研究に発展させることが可能であると考えている。既にこの二次元ナノ空間に機能性分子をゲスト分子として導入させ、周期的に配列させることに成功している(論文準備中)。今後は、(1)によって得られた多様な分子について(2)と(3)の切り口で研究を推し進め、これらの研究方策を軸に大いに本研究を発展させ、目標とするナノ周期構造の機能化を達成する予定である。
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Research Products
(7 results)