2016 Fiscal Year Research-status Report
分子三脚単分子膜による超高感度、高選択性金属イオンセンサーの開発
Project/Area Number |
15K05474
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
北川 敏一 三重大学, 工学研究科, 教授 (20183791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 克幸 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 准教授 (80208793)
岡崎 隆男 三重大学, 工学研究科, 准教授 (90301241)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己組織化単分子膜 / 分子三脚 / イオンセンサー / デアザプリン / フェロセン / 薗頭カップリング / サイクリックボルタンメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アダマンタン骨格をもつ三脚形トリチオールがAu基板表面に強固に吸着して自己組織化単分子膜を形成することに基づき、三脚分子の上部に金属イオン配位能をもつリガンドと電気化学活性なフェロセンを結合した単分子膜を作製することにより、電気化学的挙動に基づくイオンセンサーを開発することを目的とする。平成27年度にセンサー膜の構成分子であるアダマンタン三脚-デアザプリン-フェロセン連結分子を合成し、自己組織単分子膜の作製を行ったため、平成28年度はこの単分子膜のセンサー機能の確認を中心に検討を進めた。 1.イオンセンサー機能の検証 膜構成分子中のフェロセン部分の酸化還元に由来する可逆波が電解質溶液にPb[2+]塩を添加することにより、正側へ約0.10 Vシフトすることを確認した。微分パルスボルタンメトリーを用いることにより、Pb[2+]の濃度が極めて低い場合(1.0E-9 M)でもシフトを確認することができた。この結果は、得られた単分子膜が高感度のPb[2+]センサーとして働くことを示しており、デアザプリン-フェロセン連結体の溶液中での蛍光変化によるPb[2+]イオンの検出限界(1.3E-8 M)よりも低濃度のPb[2+]を検出可能であることが確認できた。 2.基板上でのクロスカップリングによるセンサー単分子膜の作製 上部にヨードフェニル基を持つ三脚形トリチオールの単分子膜に対して膜上で薗頭カップリングを行い、フェロセン-デアザプリン結合型分子ユニットを結合した。これにより得られた単分子膜上のフェロセニル基がPb[2+]に対して上記と同様の電気化学的挙動を示すことを確認した。このように、カップリング反応と膜作製の順序を入れ替えても同様のセンサー機能を持つ単分子膜を作製可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アダマンタン三脚-デアザプリン-フェロセン連結分子の単分子膜の酸化還元電位が極めて低濃度のPb[2+]イオンの存在下でもシフトすることが確認でき、当初の狙いである高感度が実現できた。ただし、Pb[2+]の濃度変化に対する電位シフトの応答は緩慢であり、数分以上の時間を要することが明らかとなった。これは実用センサーとしては望ましくないため、時間応答性の高い単分子膜の作製を現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
Pb[2+]イオンへの応答が遅い原因は、単分子膜上でセンサー分子が密集していることにより、デアザプリン部分へイオンが配位する際にデアザプリンの配座が変化する必要があるためと考えられる。これを解決するために、膜上のデアザプリンの密度を低くすることを次の二つの方法により検討する。1)膜上でのカップリングによりセンサー分子の結合を行う際に、反応の進行度を100%以下に調整する。2)アダマンタン三脚-デアザプリン-フェロセン連結型トリチオールとデアザプリン構造を持たないチオールの共吸着により、表面のデアザプリンの密度を下げる。 また、デアザプリン以外の各種リガンドを用いたイオンセンサー膜を作製してイオン検出能を調べるとともに、各単分子膜のイオン選択性を明らかにする。
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