2016 Fiscal Year Research-status Report
安定有機ラジカルを有するドナー分子を用いた外場応答型伝導体の開発
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15K05483
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
藤原 秀紀 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70290898)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子性伝導体 / 伝導性 / 磁性 / 安定有機ラジカル / TTF / 光機能性 / X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、TTFなどのπ電子ドナー部位に対し安定有機ラジカル部位を置換した複合分子やその磁性遷移金属錯体を開発し、伝導性π電子と安定有機ラジカル、遷移金属dスピンが協奏しあう高次の磁気的相互作用を有する磁性伝導体の開発を目指している。平成28年度は研究計画・方法②に従って、安定有機NOラジカルを内包する複合分子のカチオンラジカル塩・遷移金属錯体の作製とその構造・複合機能性の評価を行った。その中で、2,2,5,5-Tetramethylpyrrolin-1-yloxyl radicalを、エチニルスペーサーを挟んでTTFに結合させた分子1を用いることにより、1・MCl4 (Fe塩 : M = Fe, Ga塩 : M = Ga)が得られたので、その構造解析と各種物性評価を行った。どちらの塩もドナーとアニオンは1 : 1塩を形成しており、TTFは1電子酸化状態にある。MCl4-アニオンはドナー分子の横に位置し、Cl-S間には3.34 Åの短い接触がみられる。結晶中においてドナー分子はa軸方向に強く二量化しながら一次元的に積層している。各部位間の磁気的相互作用について拡張ヒュッケル法により計算すると、FeCl4-とTTF間で19.6 Kという大きな値を示した。磁化率の温度依存性を測定すると、どちらの塩もキュリーワイス則に従った温度依存性を示した。Ga塩のキュリー定数はS = 1/2の場合の理論値 (0.375 emu K mol-1)に近く、TTF部位が強く二量化していることから、π電子はスピン一重項状態を形成していることが示唆された。一方、ワイス温度θ から、このFeCl4塩では鉄スピン間に-3.9 Kの反強磁性相互作用が存在していることがわかったが、直接的なd-d相互作用はほとんど存在しないことから、主にπ-d相互作用を介したものだということが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画・方法②安定有機NOラジカルを内包する複合分子のカチオンラジカル塩・遷移金属錯体の作製とその構造・複合機能性の評価については、平成28年度の研究実績に示すように成功しており、予定通りに進行している。M(hfac)x錯体などの各種遷移金属錯体については検討を行っているが、まだ良質な結晶試料が得られていないため、今後も継続して検討を行う。物性評価については、伝導性や磁性測定、構造解析など予定通りに進行している。また、共同研究者である新潟大の古川准教授により、分子1や2への光照射による過渡的なスピン状態のダイナミクスに関するパルスESRを用いた共同研究を推進しており、日本化学会第97春季年会や第10回分子科学討論会において既に発表が行われている。また、平成28年度の研究成果についてはMagnetochemistry誌への論文発表を行った。 平成28年度以降の研究計画・方法 ①ジアセチレンスペーサーを有するπ-n複合型ドナー分子の合成と光重合物質の開拓については、ジアセチレン部位に結合させるための有機ラジカル部位の合成を行っているところであり、平成29年度中に研究を進展させる予定である。また、②安定有機NOラジカルを内包する複合分子の遷移金属錯体を用いた伝導性カチオンラジカル塩の作製とその構造・複合機能性の評価については、上記で述べたように、遷移金属錯体の作製に現在取り組んでいるところであり、作製次第、カチオンラジカル塩の作製と物性評価を行う予定である。 以上の観点から、進捗状況として、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
②安定有機NOラジカルを内包する複合分子の遷移金属錯体の作製とその構造・複合機能性の評価について、今後は、電気分解法や混合法による結晶作製を行う際の温度や溶媒、電流・電圧値など各種条件を再検討すると共に、結晶を与えやすい分子構造への変更を行うことで、問題点を克服していく予定である。また、遷移金属錯体が合成できた場合には、各種伝導性カチオンラジカル塩の作製を計画通り進めて行く予定である。 一方、平成28年度に予定していたジアセチレンをスペーサーとして有する分子の開発についても合成を進めているところであり、今後は、計画通り開発を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
64,989円の残金が生じたが、大きな額ではなく、次年度予算と合算して有効利用するために余剰金とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
64,989円の余剰金は物品費として平成29年度予算と合算して使用する。
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Research Products
(24 results)