2016 Fiscal Year Research-status Report
高感度オプトードのための分子集合体ケモセンサーの開発
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15K05487
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
藤田 典史 名城大学, 理工学部, 准教授 (10346819)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 自己集合 / 低分子ゲル / ケモセンサー / 色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体試料や環境試料中の極微量イオンあるいは有機物の定量検出を目的として、従来の単分子ケモセンサーから脱却した、分子集合体を用いたケモセンサーの開発を進め、高感度オプトード用イオン感応物質の開発を最終目標としている。昨年度までに感応物質の候補とした長鎖アルキル基を有する分子集合性クルクミン(1)の合成に成功し、1から調製した分子集合性薄膜がCu(II)による有意な蛍光消光を示す事を明らかとした。そこで、本年度は、薄膜を用いたより詳細なセンシング能の評価を行ったところ、その消光効率は高くなく、イオンがイオンが溶解する溶液部分と薄膜表面が形成する界面の面積が小さい事が考えられた。そこで、化合物1の側鎖を水溶性に変えた化合物(2)を合成し、これが与える水性ゲル中のナノスケールの繊維を利用することで表面積の増大を企てた。合成は化合物1と同様に、最終ステップでクルクミン核を構築するルートを採用した。得られた2は期待した通り、水および水-プロパノール混合溶媒をゲル化した。とりわけ、水および水―1-プロパノール混合溶媒では透明性の高いゲルを与え、今後の分光評価に用いた。水中における2の溶液状態とゲル状態の紫外-可視分光スペクトルを比較すると、400 nm付近のそれぞれの極大吸収波長が413 nmおよび412 nmと、ほとんど変化がなかった。このことから、ヒドロゲル内に生成している一次元分子集合体はH会合とJ会合の中間的な会合様式を有していることが明らかとなった。2の溶液状態の金属イオン添加による吸収特性は、3価の鉄イオン (Fe3+)と2価の銅イオン (Cu2+)を用いて評価したところ、2はFe3+と1 : 2錯形成を行うことが判明した。2の水溶液にCuCl2の水溶液を滴下したところ、その発光強度滴下前を1とし換算した発光強度が5割近くまで下がることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設計した疎水性分子集合体ケモセンサーの詳細な評価を行い、Cu(II)に対して優位な消光が確認されたが決して効率的なものではなかった。そこで、新たな分子設計により、親水性分子集合体ケモセンサーの合成に取り組み、期待した通り、水および水-有機溶媒混合溶媒をゲル化する化合物を得た。この化合物の基本的なゲル物性及び、水中におけるCu(II)との相互作用を確認でき、さらに、ゲル中では極度に発達したナノスケールの繊維状分子集合体が存在すると考えられるため、本系を利用した効率的なケモセンシングが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は得られた親水性分子集合体ケモセンサーを用いた重金属イオンの系統的な認識能の評価を行う。分子集合体の電子顕微鏡による観察をすすめ、各種金属イオンとの相互作用能や吸収スペクトル及び発光スペクトルの変化について調査を行う。水中における有機物に対するセンシングにも挑戦したい。
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Causes of Carryover |
当初、疎水的分子集合性ケモセンサーを中心にして一連の分子群を展開しようと考え、その費用を計上していた。期待したような検知能が得られなかったため、計画を変更し、親水的分子集合性ケモセンサーの合成に注力したため、計画を変更し、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
合成した親水的分子集合性ケモセンサーが良好なゲル化能を示したため、疎水的分子集合性ケモセンサーの代替化合物として展開する。そのため、次年度使用額の多くを合成用試薬および合成用器具(少量蒸留精製装置)の購入に充当する。また、本研究課題の成果を発表するための旅費及び学会参加登録費に充当する。
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Research Products
(1 results)