2015 Fiscal Year Research-status Report
カラミチック液晶とディスコチック液晶間を熱及び光照射で相転移するシステムの構築
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15K05488
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
内田 欣吾 龍谷大学, 理工学部, 教授 (70213436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 無機機能材料研究部門ハイブリッドアクチュエーターグループ, 研究員 (40357223)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液晶 / カラミチック液晶 / ディスコチック液晶 / アゾベンゼン / フォトクロミズム / 相転移 / 分子集合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶は、棒状分子からなるカラミチック液晶と、円盤状分子からなるディスコチック液晶に分類される。我々が開発した分子は、一つの分子が棒状と円盤状に形を変えることで、カラミチック液晶とディスコチック液晶の双方を発現するだけでなく、光照射により等温的に双方を可逆的に発現することができる。末端アルキル鎖長14のエステル誘導体は、既にカラミチック液晶と、ディスコチック液晶を示すことを論文発表してきた。そのカラメチック液晶はスメクチックA相であるが、ディスコチック液晶の相が何相であるかは未決定であった。今回、スプリング8の放射光を用いて、これがレクトアンギュラーカラムナー相であることを決定した。棒状ー円板状に形態変化する分子の液晶配向による異方的物性として、屈折率の異方性の測定を実施した。測定には0.1x0.1mm2以上の均一配向ドメインが必要である。この系は、従来法では十分な面積の獲得が難しいことが判明し、新たな厚膜の配向制御法の検討を行い、実験室でのドメイン形成条件を確立した。 エーテル誘導体においても、エステル誘導体と同様にカラミチック液晶とディスコチック液晶が共に出現することを確認できた。枝分かれをもつエーテル誘導体では、液晶相を示す温度が50℃程度低下することも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初から合成してきたエステル誘導体が不安定で、室温で湿度制御した保管庫に入れておいても経時的に加水分解が進行していることが判明した。そのため、せっかく合成した誘導体が測定時に使い物にならないか、純度が落ちて測定値の信頼性が落ちることが判明した。 しかしながら、エーテル誘導体でもエステル誘導体と同様にカラミチック液晶とディスコチック液晶が共に出現することを確認しており、今後はエーテル誘導体を主に用いて研究を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
安定で長期保存できるエーテル誘導体においても棒状分子からなるカラミチック液晶と、円盤状分子からなるディスコチック液晶の双方を示すことが分かったので、これらを主体に研究を展開する。エーテル誘導体においてトリフェニレンコアとアゾベンゼン部位をつなぐアルキレン鎖の長さがカラミチック液晶とディスコチック液晶の発現に決定的な影響を及ぼすことが示唆される実験結果を得ており、これの確認を急ぐ。前年度行ってきた枝分かれ構造をもつ誘導体は、正確にはジアステレオマーの混合物なので、精製が難しく液晶相の同定が十分ではない。再度この化合物の精製と同定を行い、新たに末端アルキル鎖の分枝構造と、不斉炭素導入を行う。今年度は、1つの不斉炭素を各々の鎖に1つづつ導入することを考える。 一方、スプリング8の放射光を用いて解析を行うと、非常に短時間で液晶相の構造が分かるため、棒状分子から円盤状分子へ、あるいは逆に円盤状分子から棒状分子への相変化をしている途中の構造変化のプロフィールを追跡できる可能性がある。あるいは、熱相転移と光相転移の間での構造変化のプロフィールが異なる可能性もある。このような、相転移途中の分子の動きを解析し、分子集合体としての液晶の挙動を理解する。 ディスコチック液晶は円盤の重なった方向に電子的過程に基づく高速の電荷輸送能があり、スメクチック液晶は層面内に、カラムナー相ではカラム軸方向にその輸送能がある。本系では、SmA相ではガラスやITO基板上では自発的垂直配向(ホメオトロピック配向)することを既に見出しており、これが配向ベクトルを固定できることに対応することから、分子の異方形状が変わるだけで電荷の易輸送軸が90°変化することが期待される。温度制御下における電気伝導の異方性変化を計測し、さらに飛行時間計測(Time-Of-Flight)法を用いて電子的なキャリヤ輸送の異方的変化を評価する。
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Causes of Carryover |
2016年度にSPring8での液晶の時間変化を追跡する測定が採択されていたので、そのための予算として2015年度の使用を手控えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度にSPring8での液晶の時間変化を追跡する測定のための材料の購入、およびSPring8への交通費に充てる。
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Research Products
(8 results)