2015 Fiscal Year Research-status Report
マトリックスを利用した非古典的円偏光発光スイッチ・増幅システムの構築
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15K05489
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
今井 喜胤 近畿大学, 理工学部, 准教授 (80388496)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蛍光 / ビナフチル / 円偏光発光 / CPL / 円二色性 / CD / 光学活性 / キラル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、有機合成的手法をできるだけ回避し、発光性分子を各種物性を有する有機あるいは無機マトリックス中にドープすることにより、マトリックス複合円偏光発光(CPL)材料を創製することである。すなわち、マトリックスの種類・ドーピング手法の違いに応答して、CPLのスイッチ・メモリー・増幅さらにはCPL波長のチューニングが可能なマトリックス複合円偏光発光材料を開発することである。 まず、軸不斉を有するビナフチルユニットにリン原子が結合した光学活性BINAP及び光学活性BINAPOを用い、クロロホルム溶液中、PMMA-filmマトリックス中での蛍光(PL)、円偏光二色性(CD)及びCPL特性について検討した。光学活性BINAPは、クロロホルム溶液中では蛍光・CPL特性は観測できなかった。一方、興味深いことに、BINAPをPMMA-filmマトリックス中にドープしたところ、CPLを観測することに成功した。 次に、低環境負荷を目的とし、天然物由来の高分子マトリックス材料として、米糠から得られるイノシトールから合成した高分子マトリックスを、光学活性なビナフチル発光体として、リン酸基を有する1,1'-Binaphthyl-2,2'-diyl hydrogenephosphateを用い、光学活性マトリックス複合有機発光体を創製し、そのCPL特性について検討した。光学活性マトリックス複合有機発光体のfilm状態におけるCPL測定を行った結果、CPLを観測し、イノシトール由来マトリックス複合有機発光体が、CPL特性を発現できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、円偏光発光(CPL)発光体のCPL増幅には、有機合成的手法に基づく分子設計、さらにイリジウム(Ir)、カドミウム(Cd)、ガリウム(Ga)など金属元素(レアメタル)の使用が一般的となっている。本研究では、発光体がマトリックス中で固定化されることによる熱振動制御を利用することによる、有機合成ゼロステップかつレアメタルフリー系での、CPL増幅を達成した。具体的には、室温、溶液中では、非蛍光の光学活性BINAPをPMMA-filmマトリックス中にドープさせることにより、CPLを発生させることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究では、研究計画に沿って、同じキラリティーを有する光学活性な分子を用い、各種マトリックス分子と複合化させるにより、各種光学特性の符号を制御することを試みる。具体的には、キラリティーを反転させることなく、性質の異なる2種類の有機高分子材料(親水性および疎水性)を用いることにより、同じ構成分子で、分子集合様式を制御し、蛍光(PL)特性、固体状態円偏光二色(CD)性、円偏光発光(CPL)特性の制御を試みる。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究開始の初年度に当たり、既存の光学活性有機発光体を用いて実験を行ってきた。そのため、試薬消耗品費がほとんどかからなかった。次年度以降は、初年度の実験結果をフィードバックさせることにより、効果的な光学活性有機発光体を設計・合成するため、研究費の繰り越しを行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は、初年度の実験結果をフィードバックさせることにより、効果的な光学活性有機発光体を設計・合成するため、各種消耗品購入費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)