2015 Fiscal Year Research-status Report
らせん性多糖を活用した新規スマートマテリアルの開発
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15K05491
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
田丸 俊一 崇城大学, 工学部, 准教授 (10454951)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超分子化学 / 多糖 / らせん構造 / 自己組織化 / 刺激応答 / 階層構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
カードランの側鎖にアミロースを導入したアミロースグラフトカードラン(AGC)を用いて、複数の機能材料が秩序立って組織された、新しい超分子材料の開発を計画した。AGCが水溶性ポリチオフェンをカードラン部へ優先的に包摂した後、アミロース部に包摂する、段階的複合化を示すことが確認された。また、ポリチオフェンがカードラン部に包摂されることで吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの長波長シフトを示し、逆に、アミロース部に包摂されることで短波長シフトを示した。以上より、同一の共役系高分子でありながら複合化位置の違いにより電子構造の違いを誘起することが可能であり、ヘテロな超分子構造体を形成することが明らかとなった。さらにこの様な構造変換を利用することで、単一の蛍光分子のみ存在する系において、自己組織化を基盤とした構造変換と階層的配置による自己FRET系の構築、という新しい概念を提唱する事に成功した。 何らかの刺激応答性を持ち、多様な機能性分子と自発的に非共有結合的相互作用によって複合化することで、対象分子に刺激応答性を付与する分子を「刺激応答性機能拡張モジュール(SREM)」と定義し、その開発と有用性の評価を進めている。両性カードラン(AC)のSREMとしての有用性を確認するために、ACとカーボンナノチューブとの複合体を用いてDNAの吸脱着実験を行った。その結果、この複合体が酸性条件でDNAと高い親和性を示す事を確認し、さらにpH変化とカーボンナノチューブの近赤外光照射に伴う発熱の双方が不可欠となるANDゲート型のDNA放出を達成した。近赤外光は生体透過性に優れることから、このANDゲート型薬物輸送系は実用化に向けて重要な知見を与えるものである。更に蛍光性のポリチオフェンとACを複合化することで、pH変化に鋭敏に応答して発光色が変化するpHセンサを構築する事にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下の手順に従って、らせん性多糖を基盤とした高効率の光電変換能を示す超分子複合材料や外部刺激によってon/off制御可能な触媒系の開発を進めるともに、様々な機能性分子に刺激応答性を簡便に付与出来る超分子型刺激応答機能拡張モジュールの開発を目指すものである。 1)アミロースグラフトカードランおよび光触媒・光増感剤を導入した両性カードランを合成する。2)得られた修飾カードランについて三重らせん形成能などの基礎的な物性を評価する。3)アミロースグラフトカードランの物質包摂特性を評価し新しい光電変換系を構築する。4)光触媒・光増感剤を導入した両性カードランを複合化し活性制御可能な触媒系を構築する。5)両性カードランの超分子型刺激応答機能拡張ユニット(SREM)としての機能評価。 これらの内、平成27年度に計画した実施内容は、アミロースグラフトカードランの合成、光触媒・光増感剤を導入した両性カードランの合成、両性カードランのSREMとしての応用、であった。結果的にアミロースグラフトカードランの合成に成功するに留まらず、蛍光色素の階層的組織化と、光捕集システムへの応用に関する基礎知識を得るに至っている。また、両性カードランはカーボンナノチューブや蛍光性高分子と複合化することで、容易に刺激応答性を付与できるSREMであることを実験的に証明することに成功した。以上の結果は、研究申請当時の想定を上回る、目覚ましい研究成果である。一方、光触媒・光増感剤を導入した両性カードランの合成に関しては、望みの機能を発現し得る分子の合成に至っておらず、当初の想定よりも研究が遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
アミロースグラフトカードランのアミロース枝部にドナー分子としてナフタレンジイミドなどのn型半導体分子を、カードラン中心部にオリゴチオフェンまたはポリチオフェンなどのp型有機半導体分子をそれぞれ包摂した樹状超分子複合体の調製法を確立する。更にこうして得られた複合体を電極上に固定する手法について検討する。順調に研究が進んだ場合、この超分子複合体が示す光電変換能を、光起電力や電荷分離状態の寿命などを測定する事で評価する。 レニウム錯体導入両性カードラン(光触媒)とルテニウム錯体導入カードラン(光増感剤)をそれぞれ合成し、それらが複合化したヘテロ型の三重らせん構造形成について検討する。平成27年度の結果を受けて、両性カードラン上のアミノ基やカルボキシル基の導入率と錯体導入反応の相関関係を明らかにして、標的のカードラン誘導体の合成法を確立する。さらに上記金属錯体の導入率などを変え、さらにpHや温度、塩濃度などのらせん構造形成条件を制御することで、副生成する可能性がある一方のカードラン誘導体のみで構成されたホモ型の三重らせんの形成を可能な限り抑制出来る条件を見出す。 さらに、β-1,3-グルカン類のSREMとしての有用性を拡張するために、両性カードランと様々な機能性材料との複合化を検討すると共に、熱や光に応答する部位を導入した新たなカードラン誘導体を合成し、新しいSREMの開発を進める。
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Research Products
(13 results)