2016 Fiscal Year Research-status Report
パラジウムエノラートの極性転換を活用するカルボニル化合物の新規合成法
Project/Area Number |
15K05501
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹中 和浩 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20423113)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | パラジウム / エノラート / 極性転換 / カルボニル化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機化合物は炭素原子間の連結を基本骨格としており、分子に存在する官能基の種類や数によって様々な性質を示す。とりわけカルボニル化合物は、カルボニル基の持つ特徴的な反応性とそれに基づいた官能基変換の容易さが相俟って有機合成化学の中心的役割を担っている。カルボニル基のα位が官能基化された化合物も数多く知られ、なかには生物活性を示す物質も少なくないことから医薬品などへの応用研究が進められている。そのため、有機合成において最も重要な変換である炭素-炭素結合の形成とカルボニルα位の官能基化を一段階でかつ触媒的に達成できれば、有用な化合物群の効率的供給が可能になる。そこで本研究では、パラジウム触媒を活用し、通常は求核剤として振る舞う「パラジウムエノラート」中間体を求電子的性質へと逆転させる「極性転換」を基軸に据え、炭素-炭素結合形成による骨格構築とカルボニルα位の官能基化を一挙に行うカルボニル化合物の新規合成技術の確立を目指している。 平成28年度ではカルボニルα位に導入される求核剤の適用範囲の拡張に成功した。すなわち、これまでに研究代表者が開発した触媒的パラジウムエノラート極性転換反応では求核剤がアセテートに限られていたのに対し、今回見出したアルキニルシクロヘキサジエノン基質の環化的ヒドロアシルオキシ化では、様々なカルボキシレートをカルボニル基のα位に取り込むことができた。本反応はスピロ型配位子を使用せずとも円滑に進行し、炭素-水素結合、炭素-炭素結合、炭素-酸素結合が一つの触媒サイクルで連続して形成され、三置換オレフィンを有する二環式生成物を高収率で与えた。 さらに、重水素ラベル実験などの反応機構解析も行い、この変換プロセスでは以前の反応とは異なり、パラジウム0価種にカルボン酸が酸化的付加して生じたパラジウムヒドリド種へのアルキン挿入を経て進行していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、酢酸(アセテート)だけではなく他のカルボン酸(カルボキシレート)を求核剤として適用することに成功した。また、特別な配位子の非存在下条件や以前の反応とは異なる機構でもエノラートの極性転換が起きることを突き止めた。その上、予備的な検討ながらカルボン酸以外の求核剤の適用にも目途がついたため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き触媒的パラジウムエノラート極性転換反応における求核剤の拡充を図る。α‐アミノカルボニル化合物は、アミノ酸に代表されるように自然界に広く存在しており工業的にもまた生物学的にも重要な化合物群である。そこで、アミンやアミド、イミドなどの窒素官能基をカルボニルα位へと導入できる条件を精査する。その他にも炭素求核剤の適用を検討し新規炭素-炭素結合形成反応の開拓へと繋げる。
|