2016 Fiscal Year Research-status Report
多置換オレフィン類の立体補完的パラレル合成反応開発と特異分子合成への応用
Project/Area Number |
15K05508
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田辺 陽 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30236666)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 立体選択的合成 / 多置換オレフィン / プロセス化学 / 立体補的合成 / パラレル合成 / 医薬 / トシル化 / クロスカップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
(E)-, (Z)-立体固定された多置換オレフィン類は,有機合成上極めて重要な合成素子である.多くの合成法が開発されてきたが,類縁化合物を出発原料とする (E)-, (Z)-パラレル合成は稀有といって良い.本課題では,同一の入手容易なβ-オキソエステル(β-ケトエステルおよびα-ホルミルエステル)からプロセス化学を志向したパラレル手法による三・四置換 (E)-,(Z)-α,β-不飽和エステルの合成方法論を開拓する.市販でないβ-オキソエステルの調整には,独自のTi-Claisen 縮合などを駆使する. 萌芽となる実用的な三置換α,β-不飽和エステルの (E)-, (Z)-立体補完的合成法を報告している(Org. Lett. 2009(SYNFACTSに採用), Org. Lett. 2010).最近,エノールホスホナートを経由する立体補完的合成を報告した(Org. Biomol. Chem. 2015).さらに,α,β-またはβ,β-ジアリール三・四置換α,β-不飽和エステルの立体補完的パラレル合成およびSSRI医薬Zimelidineの分割法によらない初の (E)-, (Z)-立体補完的パラレル合成に成功した(Chem. Eur. J. 2015). 加えて,各種 (E)-, (Z)-四置換α,β-不飽和エステルの基質一般性の高い方法論も確立し,制癌剤Tamoxifen の初の (E)-, (Z)-立体補完的パラレル合成にも成功した(Synthesis, 2016, ChemistryOpen. 2016).なお,内容は,有機合成化学のハイライト誌(年間約 40 件)である Synform 誌(2017)に掲載された. これらの研究過程で,構造は比較的単純であるが,従来煩雑合成を要した2つの有用シントンの実用合成法を見出し,Organic Syntheses 誌に2件提案できた.その1件掲載済み(2016),1件印刷中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に述べたように,当研究室では一貫して,市販または独自のTi-Claisen 縮合にて調整容易なβ-オキソエステル(β-ケトエステルおよびα-ホルミルエステル)を基質とする独自反応を開発中である.本課題および関連する派生研究において,この2年間で1件の速報, 6件のフルペーパーを公表した.さらに,これらの一部内容は,有機合成化学のハイライト誌(年間約 40 件)である Synform 誌(2017)に掲載された. ポイントとなる知見は以下のとおりである. 1.基質となる多様なβ-オキソエステル調整法を提示できた. 2.エノールトシラートがエノールホスホナートに比べクロスカップリングパートナーとして優れる.すなわち反応性,アトムエコノミー,調整反応剤の価格・簡便性などの多面においてである. 3.しかしフル置換エノールトシラートの調整法に難があった.そこで,この調整法を回帰的に再検討し,十分実用的な方法を見出した. 4.最終目標である (E)-, (Z)-四置換α,β-不飽和エステルのパラレル合成において,多くの実施例を提出し基質一般性を高め,SSRI医薬Zimelidineおよび制癌剤Tamoxifen の初の (E)-, (Z)-立体補完的パラレル合成にも成功した.ユーザーフレンドリーな方法論を提示できたと考えている. 派生研究として,Ti-Claisen縮合及びTi-直接アルドール反応を基軸とする,alternaric acid及び (-)-azaspireneの不斉全合成を達成できた(Chem. Commun. 2013, Eur. J. Org. Chem. 2016).さらに (R)-podoblastin-S and (R)-lachnelluloic acidの不斉全合成も達成した(Molecules 2016, (asymmetric syntheses 2016, invited)). これらの研究過程で,単純であるが,従来煩雑合成を要した2つの有用シントンの実用合成法を見出し,Organic Syntheses 誌に2件提案できた.
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Strategy for Future Research Activity |
1.エノールトシラートを基質とする,シラン/Pd触媒系による還元法にて,二および三置換α,β-不飽和エステルの立体補完的パラレル合成を目指す.対抗となる既知法はLindler 還元やHWE 反応によるものであるが,出発基質や条件の特異性・簡便性において差別化を図る方針である. 2.有用シントンに関し,これまでの2件に加えさらなるOrganic Synthesis詩への新規掲載を目指す. 3.容易に調整可能な α-ハロ-β-ケトエステルも簡便に立体補完的エノールトシラート,さらにはエノールホスホナートに変換可能である.これらを基質とする逐次段階的クロスカップリングとパラレル合成を目指す.天然殺菌活性物質Strobilurin の効率的な立体選択的合成への応用を行い有用性を高める.すでに萌芽的結果を得ている. 4.さらに「シクロファン」,「おもしろ有機分子」「テトラ・ヘキサエンイン機能性分子」の合成への応用展開も同時に検討する.
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Causes of Carryover |
消耗品購入での誤差が生じたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品購入にあてる.
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Research Products
(10 results)