2016 Fiscal Year Research-status Report
不活性結合切断反応を鍵とする分子リノベーション技術によるPETプローブ迅速合成
Project/Area Number |
15K05509
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
丹羽 節 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 副チームリーダー (30584396)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 陽電子放射断層撮像(PET) / 遷移金属触媒 / 脱フッ素ホウ素化 / 脱カルボニルホウ素化 / アリールスルフィド / 分子プローブ / ロジウム触媒 / 銅触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命科学研究において興味ある分子そのものを出発原料とし、有用な分子プローブを迅速に合成する分子リノベーション技術を実現するため、ホウ素化を中心とする様々な新規有機反応の開発を進めた。 昨年度までにニッケルと銅触媒を用いた炭素-フッ素結合の切断を経るホウ素化反応を開発していたが、この反応は空気に不安定な試薬を組み合わせて用いる必要があるためか、スケーラビリティの面で問題があった。これに対し、銅触媒のみでも同様の脱フッ素ホウ素化が進行することを見いだした。本反応では、空気中で長時間保管可能な銅触媒を使用でき、スケーラビリティも高く、先の反応より実用的であると考えている。実際に市販医薬品の脱フッ素ホウ素化にも適用でき、その有用性を明らかにした。 フッ化アレーンと同様に、チオアレーンも医薬品や機能性材料によく見られる基本的な構造である。検討の結果、チオアレーンのC-S結合の切断を経るホウ素化反応が、ロジウム触媒を用いることで進行することを明らかにした。硫黄原子を持つ官能基は、遷移金属触媒を用いる変換反応における配向基として利用できるため、本手法を組み合わせて用いることで、多置換ベンゼン類の新規合成法を開発することもできた。 続いて、より普遍的な官能基としてカルボキシ基に着目した。カルボン酸は多彩な構造を持つものが容易に入手用意であるため、カルボキシ基を起点とする変換手法は、PETプローブの開発に留まらない汎用性を有すると考えられる。カルボキシ基を一旦チオエステルへと変換し、脱カルボニルを含む手法でホウ素化を試みたところ、望みの化合物を高収率で得られることが明らかになった。この手法は80度という比較的低い温度で進行し、非常に広い基質一般性を示した。市販医薬品4種のホウ素化にも成功しており、その実用性を明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたC-F結合、C-CN結合に留まらず多様な結合の切断を経るホウ素化反応の開発に至っており、当初の計画を上回る成果を出しているものと考えている。また、昨年度見いだしたC-F結合切断を経るホウ素化反応の高度化も達成しており、本研究の最終的な目的である、分子リノベーション技術の分子プローブ開発への応用の実現性を大きく向上させている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に見いだしたカルボン酸のホウ素化技術の高度化を進め、分子リノベーション技術の適用拡大を目指す。また、11C-シアノ基標識技術をまとめ、論文発表を行う。以上の技術を活かし、実際にPETイメージングに適用可能なPETプローブの開発に着手する。
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Causes of Carryover |
予定より計画は順調に進行し、様々な反応開発に成功したが、いずれも共通の試薬を用いて実施したため、追加の支出は発生しなかった。さらに、当初より必要な触媒量を大幅に削減できたことから、金属触媒に必要な費用の大幅な削減が達成できたため、今後の研究のさらなる展開への使用が適切であると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に開発したいくつかのホウ素化反応を駆使し、PETプローブの開発を進める。次年度使用額に相当する予算は、平成28年度に予定外に開発した手法を用いた、PETプローブ迅速合成法への適用に使用する。
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