2015 Fiscal Year Research-status Report
ジスルフィド結合を有する刺激応答性自己修復熱可塑性エラストマーの開発
Project/Area Number |
15K05511
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
寺境 光俊 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70251618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 和也 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70467025)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己修復 / 熱可塑性エラストマー / ジスルフィド / マルチブロック共重合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
セグメントマルチブロック共重合体型熱可塑性エラストマーのソフトセグメントに動的共有結合であるジスルフィド結合を導入して刺激応答性自己修復熱可塑性エラストマーを合成することが本研究課題の目的である。 平成27年度はチオール基を両末端にもつソフトセグメント(ポリスルフィド)とハードセグメント(芳香族ポリスルホン)を合成し,これらを酸化することにより結合点にジスルフィド結合をもつセグメントマルチブロック共重合体を合成し,特性評価を行った。分子量測定,粘度測定により高分子量重合体の生成を確認した。熱分析ではソフトセグメントのガラス転移が確認され,ソフトセグメントがハードセグメントと相分離構造を形成せいていることが示唆された。マルチブロック共重合体はテトラヒドロフランなどの有機溶媒に可溶であり,溶液からのキャスト法により薄膜が作製可能であった。AFM観察より,膜表面にミクロ相分離構造が形成されていることを確認した。マルチブロック共重合体薄膜はソフトセグメント導入により大きな伸びを示し,ソフトセグメント導入量の増加とともに伸びは大きくなった。 ソフトセグメントを70wt%導入したマルチブロック共重合体薄膜を切断した後,破断面を密着させて修復試験を行った。ソフトセグメントの分子量が約4000を用いたマルチブロック共重合体では未破断試料に対しUV光は38%,加熱では52%の伸びの回復が観察された。ソフトセグメント分子量が2000のマルチブロック共重合体では熱による修復試験で88%の修復が得られた。セグメントの分子量はマルチブロック共重合体のジスルフィド濃度に大きな影響を与える。ソフトセグメント分子量を下げることで動的共有結合であるジスルフィド濃度が高くなった効果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた両末端にチオール基をもつソフトセグメント,ハードセグメントそれぞれを合成した。両セグメントの酸化によるジスルフィド結合の形成とセグメントマルチブロック共重合体の合成を行った。マルチブロック共重合体が高分子量体であること,ミクロ相分離構造を形成していること,有機溶媒に可溶であることを確認した。 UV光照射と加熱による修復試験に対する実験方法の最適化を行い,修復実験に対するプロトコルを確立した。複数の試料で修復試験を行い,ソフトセグメント分子量が修復率に大きな影響を与えることを見いだした。 これらは計画が従業に進展していることを示しており,特にソフトセグメント分子量を制御することで目標とする高い修復率をもつ熱可塑性エラストマーの合成が達成された。現在,修復率とソフトセグメント分子量や構造の関係について検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で高い修復率を達成しているマルチブロック共重合体について,セグメント分子量と修復率の関係を精査し,ジスルフィド含有量と修復率の関係を精査する。ソフトセグメントの主鎖骨格としてよりガラス転移温度が低いポリテトラヒドロフランや骨格自体がジスルフィド結合により構成されるポリジスルフィドなどを用い,ハードセグメントと重合することでセグメントマルチブロック共重合体を合成し,修復特性とソフトセグメントの分子構造や分子量の関係について検討する。最終的にはジスルフィド結合の動的共有結合特性を活かした自己修復性熱可塑性エラストマーの分子設計指針を確立する。
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Causes of Carryover |
論文投稿に必要な英文校閲費用を残していたが,論文投稿が遅れたため次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に論文投稿準備として使用する。
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Research Products
(2 results)