2016 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化法による遷移金属錯体固定化エチレン低重合触媒の調製
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15K05514
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
黒川 秀樹 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50292652)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エチレンオリゴメリゼーション / αーオレフィン / エチレン重合 / 錯体固定化触媒 / 層間固定化触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、自己組織化調製法を用いてα-ジイミンニッケル系錯体およびキノリン-イミン系ニッケル錯体を粘土鉱物層間に固定化した触媒を調製し、エチレンオリゴメりゼーションによる評価を行った。フッ素四ケイ素雲母層間固定化α-ジイミンニッケル系錯体触媒によるエチレンオリゴメリゼーションでは、昨年度の検討から、目的とするαーオレフィン類に加えて、より高分子量のポリエチレンワックスが高い選択率で生成することが分かっていたため、その生成量抑制を目的として、アニリン上のオルト置換基を種々かえて立体障害の効果を検討した。その結果、オルト位のかさ高さとワックス成分の量には相関が見られなかった。これは、本触媒系ではニッケル周りの立体障害よりも中心金属の電子状態の方が、連鎖移動反応に大きく影響していることを示していた。 次に、反応系に1-ヘキセンを添加して共重合を行いその影響について検証した。エチレン/1-ヘキセン共重合では、エチレン単独重合に比べて、α-オレフィン類の収率などには大きな違いは観測されなかったが、生成物分布を詳細に見ると、エチレン単独重合の場合と比べて内部オレフィン類の生成割合が増加していた。これはヘキセン挿入後のchain-walkingの過程で、二重結合の内部への異性化とその後の脱離反応が起こったためと思われる。 最後に、文献等によりα-オレフィン類を効率的に合成可能な錯体として報告されている、N-(5,6,7-テトラヒドロキノリン-8-イリデン)アリールアミンニッケル錯体を層間に固定化した触媒の調製と評価を行った。その結果、本触媒系は、エチレンの低重合に活性を示すものの、その活性およびα-オレフィンへの選択率は低く、文献の結果とは大きく異なっていた。これは粘土鉱物に固定化したことにより、粘土鉱物表面と錯体の相互作用により、錯体の骨格構造が変化したためと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「(3)やや遅れている」の理由として、まず、触媒調製とエチレン低重合による評価については概ね、当初の計画通り進んでいるが、調製した触媒のパフォーマンスが当初の目論見よりも大幅に低く、最終目標に対して十分な成果が得られていないためである。 もう少し詳細に結果を評価すると、α-ジイミンニッケル系触媒については、活性は概ね目標値が得られているが、α-オレフィンへの選択性が低く、配位子構造を立体的、電子的観点から最適化しても、選択性の向上がほとんど見られなかった。また1-ヘキセンとの共重合による効果を検討したが、低分子量化よりも内部オレフィン類の生成が促進されてしまい、望んだ効果が得られなかった。 キノリン系ニッケル触媒では、錯体の安定性が低いためか、低活性であり、かつ選択性も低く、目標達成にはほど遠い結果であった。 これら一連の結果より、検討自体は予定通り進んでいるものの、十分な成果が得られていないことから、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、自己組織化法により調製した粘土鉱物層間固定化α-ジイミンニッケル系錯体によるエチレンオリゴメリゼーションでは、高活性な触媒を調製できるものの、目的とする炭素数4~20程度のαーオレフィンと共に、より分子量の高いポリエチレンワックスが生成してしまうことが分かった。そこで、本年度は、α-オレフィン類への選択性が高く、メタラサイクルを経由するその特異なメカニズムにより、エチレンから1-ヘキセンを選択的に合成可能なCr系錯体を層状粘土鉱物層間に固定化した、Cr系層間固定化触媒の調製を試みることとした。なお、本触媒を調製するためには、まず、Cr(III)イオン交換した層状粘土鉱物を調製する必要があるが、Cr(III)イオン交換体の調製では、多核イオンの交換による酸化物生成(これは触媒調製上、好ましくない)、イオン交換後の乾燥工程(200℃乾燥)におけるCr(III)からCr(VI)への酸化等の問題があり、これらを解決する必要がある。なお、触媒調製において触媒毒となる水を除去するための乾燥(脱水)は必須であるが、Cr(III)交換体では、空気中における加熱乾燥は不可である。そこで、低温による加熱減圧乾燥あるいは脱水溶媒を用いた溶媒置換法による乾燥を試みる予定である。 Cr(III)交換体の調製と平行して、1-ヘキセンの選択合成に有効な配位子の合成を行う。具体的な配位子としては、対称型のビス(ベンズイミダゾリル)ピリジンを第1候補として配位子合成を進める。配位子調製後、Cr(III)交換体へのインターカレーションによる触媒調製、エチレン低重合による評価を行う。
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Research Products
(3 results)