Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, 片端に会合基を有する絡み合い直鎖高分子のダイナミクスの検討を行った. 片端会合性非絡み合い直鎖高分子系と同様, 鎖は1対1で会合/解離し, 解離した単量体と会合した二量体の平衡状態にある. 会合/解離速度は鎖自身の運動の速度と同程度とする. また, 高分子鎖はA型高分子であり, その誘電緩和は鎖の末端間ベクトルの配向記憶の消失過程を反映する. 粘弾性緩和は鎖の配向異方性の消失過程を反映しており, 鎖の平衡熱運動を誘電緩和とはまったく異なる形で検出する.このような条件のもと, 会合/解離反応をレプテーション機構に取りいれて会合鎖のダイナミクスの解析を行い, 粘弾性緩和と誘電緩和がどのように表されるかを理論的に検討した. 非絡み合い直鎖高分子系と同様, 会合/解離反応により, 単量体と二量体の形態は相互に転写される. これにより, 配向異方性の減衰モードに複数のカップリングが生じ,その結果, 解離で生じた単量体と会合で生成した二量体の粘弾性緩和剛性率は, 会合/解離反応がない場合に比べて, それぞれ相当程度遅延, 加速される. 一方, 単量体と二量体の記憶減衰モードは, 一対一でのカップリングしか起こらない. このため, 解離で生じた単量体と会合で生成した二量体の誘電緩和関数の遅延と加速の程度は, 粘弾性緩和剛性率の遅延, 加速の程度よりもかなり弱い. この粘弾性緩和と誘電緩和の差は, 配向異方性と配向記憶の, 鎖形態の平均の取り方の差に起因する. また, 粘弾性緩和と誘電緩和の差は, 非絡み合い直鎖高分子系でも見られたが, 粘弾性緩和の遅延/加速の程度はRouse鎖の方がレプテーション鎖よりも弱い. これは, レプテーション機構では鎖端から緩和が起こるのに対し, Rouse鎖は鎖の全ての場所から配向緩和がおこるので, 鎖端の会合基の影響が比較的少ないためである.
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