2016 Fiscal Year Research-status Report
内包物質の凝集状態とダイナミクス制御に基づく高分子ミセルの時空間機能制御
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15K05522
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
秋葉 勇 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (80282797)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小角X線散乱 / 異常散乱 / 高分子ミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、両親媒性ブロック共重合体が形成する高分子ミセルに内包された疎水性化合物のミセル内における空間分布を可視化し、空間分布および周辺のダイナミクスとミセルからの疎水性化合物の徐放との関係を明らかにすることを目的としている。 本年度は、1年目に合成した両親媒性ブロック共重合体であるポリメタクリル酸メチル-block-ポリ(メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル)(Poly1)が形成するミセルに系統的に極性を変化させた種々の化合物を内包させ、それらの空間配置を小角X線異常散乱(ASAXS)により可視化し、空間配置と徐放特性との関係について検討した。また、疎水性鎖のガラス転移温度を系統的に変化させた3種類の両親媒性ブロック共重合体の合成も行った。 ASAXSから、内包する化合物の極性が高く、水に対する親和性が高いほど、疎水性化合物がミセル全体にわたって均一に分布し、非極性の疎水性化合物はミセルの疎水性コア内部でさらに小さなドメインを形成していることが分かった。この空間配置の違いと徐放速度の関係について検討したところ、極性が高く、親水性のコロナ層にまで浸出している化合物は初期の徐放速度が極めて速いが、疎水性コア内部に微小ドメインを形成して凝集している化合物はミセルからほとんど漏出しないことが分かった。また、極性の高い化合物でも初期段階での速い徐放の後は、ほぼ放出されなかった。このことは、初期状態で疎水性コア内に配置された化合物はPoly1ミセルから放出されない事を示している。これは、Poly1ミセルの疎水性コアがガラス転移温度の高いPMMAにより形成されているために、コア内に存在する化合物の拡散が妨げられたためであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した研究計画にほぼ沿って研究が進んでおり、計画に対して十分な成果も得られている。電子スピン共鳴によるダイナミクスの測定は、スピンラベルした疎水性化合物を内包した高分子ミセルでは十分な感度では測定できなかったため、疎水性高分子鎖をスピンラベル化する必要が生じ、その合成が終了した段階であるため、ダイナミクスとの関係についての関係は当初計画よりもやや遅れている。 以上のことを鑑みると、総合的には概ね順調に研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、スピンラベル化した両親媒性ブロック共重合体のミセルを用い、内包した疎水性化合物周辺のダイナミクスを電子スピン共鳴法により明らかに、ミセル内における疎水性化合物の初期の空間配置、周辺のダイナミクスとミセルによる疎水性化合物の保持安定性、放出特性の関係について分子レベルで解明していく。
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Causes of Carryover |
放射光施設を利用した実験の旅費及び物品購入に用いる予定であったが、実験の日程が当初計画より少なくなり、かつ、次年度の4-7月期の放射光施設の利用予定が当初計画より大幅に高くなったため、一部を次年度の4-7月期に回す必要性が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4-7月期に4回ある放射光利用実験にかかる出張旅費(90,000円)と実験に必要な物品(石英製のガラス器具等 110,000円)の購入に充てる。
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