2017 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波支援による高性能イオン交換型モノリスの迅速調製の最適化
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15K05536
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
リム リーワ 岐阜大学, 工学部, 准教授 (80377689)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ波合成 / 有機ポリマーモノリス / 陰イオン交換モノリス / キャピラリーIC / ワンポット反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はマイクロ波照射による化学合成および反応条件とモノリス骨格の構造・分離性能の関係を明らかにすることを目標とした。具体的には,従来の2ステップ反応では官能基を修飾する手間が必要であったが,本研究ではワンポット反応を用い,陰イオン交換モノリス固定相の調製を行った。モノマー溶液を調製する際,ポロゲン(細孔形成剤)の種類やモノマー・架橋剤・ポロゲンの組成等を最適化し,マイクロ波照射条件(マイクロ波出力,反応温度,照射強度など)の検討を行った。
有機ポリマーモノリスの合成では,重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN),モノマーとしてメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(DMAEMA),架橋剤としてエチレンジメタクリレート(EDMA),細孔形成剤としてメタノール,エタノール,1,4-ブタンジオール,1-ヘプタノール,1-オクタノール,1-デカノール,水から2-3種類を選択し検討を行った。 従来の熱重合法では,恒温槽で24時間静置することが一般的であるが,今研究ではマイクロ波で15分の照射を試みた。マイクロ波の特徴として内部加熱や直接加熱があげられるが,内部加熱を行うことで外部加熱より均一に,効率よく重合を行うことができると考えられる。
様々な実験条件を検討したところ,恒温槽で作製する場合とマイクロ波で作製する場合の反応性の違いが大きいことがわかった。マイクロ波で合成する場合,モノマー:架橋剤(DMAEMA:EDMA)の割合が4:7以上必要であることをみいだした。また,ポロゲンの組み合わせはエタノールと1,4-ブタンジオールが最適であった。マイクロ波の出力を比較したところ,200 Wから400 Wの間ではいずれも良いキャピラリーカラムを調製することができた。合成温度については70 °Cから80 °Cが最適であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はマイクロ波加熱(照射)によるキャピラリーモノリス型陰イオン交換カラムのワンポット合成および反応の条件とモノリス骨格の構造・分離性能の関係を明らかにすることを目標とした。陰イオン交換カラムの調製は,既存の作製手順では官能基修飾を必要としたが,本研究で用いるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルは第三級アミンを持つ化合物であり,ワンポット反応によって重合を行うことができるため,従来のモノリス型カラムの作製方法より格段に容易に調製することができた。
また,従来の熱重合法では恒温槽で24時間静置することが一般的であるが,今研究ではマイクロ波で15分の照射をすることでカラムを調製することができた。調製されたカラムは5種類の混合無機陰イオンを分離することでカラムの性能評価をおこなった。中性の移動相では5つのサンプルを分けることができなかったが,移動相を酸性にしたところ4つに分離できた。第三級アミンが官能基にあるモノマーはイオン交換が起こりやすく,移動相が中性でも分離が可能であると考えられるが,移動相を酸性にすることで分離ができた要因として第三級アミンが分裂してしまったことが考えられる。さらに,恒温槽で調製したカラムは分離能がよくないものの分離はできているので,マイクロ波照射によって構造変化が起こったことが考えられる。
保持時間が安定しないため理論段数や保持係数から性能を比較することはできなかったが,共通して15分間マイクロ波を照射し水温は70~80℃,出力200~400 Wにした場合,どの条件においても分離することができた。恒温槽での調製方法と比較を行ったところ,どちらの条件の場合でも分離することができたが,保持時間が安定することはなく,加熱方法や時間では改善することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の熱重合法より格段に調製が容易になったマイクロ波合成法ではあるが,調製された陰イオン交換カラムには第三級アミンを持つことにも関わらず,中性の移動相では保持時間が安定しないといった問題点を持つ。また,恒温槽での調製法との比較を行ったところ,どちらの条件の場合でも混合サンプルを分離することはできたが,保持時間が安定することはなく,加熱方法や反応時間では改善することができなかった。
今後は,引き続き反応の条件を変化しながら,マイクロ波加熱とモノリス骨格の形成および分離性能の関係を明らかにすることを目標とする。
また,ワンポット反応がおこないやすいモノマーを選定し,SP値(i.e. 溶解度パラメーター)を計算しながら,モノマーに対して良溶媒または貧溶媒となるポロゲンや架橋剤の最適化を行い,モノリス骨格の細孔を制御することを目指す。
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Causes of Carryover |
本研究では,マイクロ波反応装置(Wave Magic MWO-1000S 型;EYELA社)を用い,陰イオン交換モノリス型キャピラリーカラムのワンポット合成を行った。モノマー溶液を調製する際,ポロゲンの種類やモノマー:架橋剤:ポロゲンの割合等を最適化し,マイクロ波反応装置の出力,反応温度および照射強度などの検討を行った。しかしながら,調製されたキャピラリーカラムの性能評価について,イオン交換クロマトグラフィー法を用いて行ったところ,混合サンプルイオンの分離を達成することができたが,カラム内の陰イオン交換基のプロトン化が進み保持時間が安定しない問題が発生した。そのため,研究計画を変更し,よりマイクロ波の影響を受けやすい重合モノマーを選定し固定相を調製することとしたことやマイクロ波装置の故障などもあったため,未使用額が生じた。
今後は,既存の装置を修理しながら,引き続きマイクロ波加熱の反応条件を変えながらマイクロ波照射による化学合成とモノリス骨格の形成および分離性能の関係を明らかにすることを目標とする。また,ワンポット反応がおこないやすいモノマーを選定し,溶解度パラメーターを計算しながら,モノマーに対して良溶媒または貧溶媒となるポロゲンや架橋剤の最適化を行い,モノリス骨格の細孔を制御することを目指す。
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Research Products
(25 results)