2015 Fiscal Year Research-status Report
ファージインターフェース制御技術の確立とバイオセンシングへの応用
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15K05541
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
渡辺 茂 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (70253333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多野 慎悟 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (70397157)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / 比色検出 / 細菌 / 凝集 / 静電相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療,食品および環境分野において,細菌検査は衛生管理や汚染原因の究明およびバイオハザード等の面から増々重要になりつつある.病原菌を早期に発見し,速やかに対応するためにも,簡便・迅速な検査技術の開発が求められている.本研究では,宿主細菌に対して特異的に感染するウイルス(“バクテリオファージ”)の生物機能に着目し,免疫反応に代わる新奇な検出技術(“ファージバイオセンシング”)について検討する. 金ナノ粒子は赤色を呈しており,凝集すると赤色から青色へと色調を劇的に変化させる.そこで検出したい細菌に対して,その表面に金ナノ粒子を選択的に凝集させることができれば,色調変化を通じて迅速かつ簡便な細菌検出が可能となる.また,ファージ分子を粒子表面に担持させることができれば,標的細菌に対して高感度かつ高選択的な迅速細菌検出技術への応用が期待される.今年度は,金ナノ粒子凝集比色法の検出原理の実証を行った.一般に細菌表面は負電荷を帯びており,細菌と金ナノ粒子間の結合を制御する上で静電相互作用が重要な役割を担うことが予想される.そこで,正または負電荷を帯びた2種類の金ナノ粒子を調製し,その影響について調べた.それぞれの金ナノ粒子溶液に黄色ブドウ球菌を加えたところ,アニオン性金ナノ粒子では全く変化が観察されなかった.しかし,カチオン性金ナノ粒子では赤色から青色へと溶液の色が劇的に変化し,目視で黄色ブドウ球菌の存在を確認することができた.また,SEM観察からカチオン性金ナノ粒子の場合のみ細菌表面に金ナノ粒子が結合し,凝集体を形成している様子が確認された.期待した通り,金ナノ粒子が細菌と結合する際,静電相互作用が重要な役割を果たすことを明らかにするとともに,細菌表面に金ナノ粒子を凝集させることで,色調変化を通じて細菌を検出できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度には,細菌特異的に感染する“バクテリオファージ”に着目し,その細菌特異性を担う尾部リガンドタンパク質(以下,ファージ分子)を新たな抗体代替分子として,粒子表面に担持させたファージ分子修飾金ナノ粒子の合成方法を確立する予定であった.しかし,検出原理の実証を終え,細菌検出に静電的相互作用が重要なことをつきとめることができたが,調整したカチオン性金ナノ粒子が凝集しやすく,ファージ分子を担持させる足場ナノ粒子としては分散安定性に乏しいことがわかった.さらに,ファージ分子も予想を超えて大変凝集しやすく,粒子表面にファージ分子を担持させる合成条件について,最適化するには至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
金ナノ粒子が分散安定な水溶液ではファージ分子が凝集し,ファージ分子が安定な水溶液では金ナノ粒子が凝集してしまうなど,当初調整したカチオン性金ナノ粒子は凝集しやすく,ファージ分子を担持させる足場ナノ粒子として,分散安定性に乏しいことがわかった.そこで次年度には,はじめにより分散安定なカチオン性金ナノ粒子の合成法について検討する予定である.具体的には,クエン酸を還元剤として合成したクエン酸還元金ナノ粒子の水溶液に,水素化ホウ素ナトリウムで還元した還元ウシ血清アルブミン(dBSA)を添加し,BSA被覆金ナノ粒子(dBSA-AuNP)を合成した後,dBSA-AuNPにカチオン性ポリマー(poly(diallyldimethylammonium chloride):PDDA)を添加し,粒子表面にPDDAを吸着させたPDDA被覆金ナノ粒子(PDDA-AuNP)を合成する.さらに,新たに合成したPDDA被覆金ナノ粒子を用いて,金ナノ粒子とファージ分子がいずれも凝集することなく分散安定な条件下,ファージ分子を粒子表面に吸着させる合成条件について検討する. さらに,当初計画案通り,蛍光色素を両親媒性ブロックコポリマーが形成するミセルに内包させ蛍光ミセルを作製し,これをファージ頭部に組織化したファージ蛍光プローブの開発に取り組む.
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Causes of Carryover |
学内の競争的資金を獲得したこともあり,溶媒,ガラス器具,分光器の光源など各研究課題に共通する消耗品の一部を購入した.そのため当初計上していた物品費が,予定額を下回った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究遂行上,必要な消耗品の購入および各種分析機器の維持管理費として使用する.
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Research Products
(1 results)