2016 Fiscal Year Research-status Report
コンパクトディスク型マイクロチップを用いる感染症検査システムの開発
Project/Area Number |
15K05544
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中嶋 秀 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (10432858)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マイクロ化学分析システム / コンパクトディスク / マイクロチップ / 蛍光 / 酵素免疫測定法 / オンサイト測定 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,現場で,誰もが,簡便かつ迅速に感染症の検査が可能な小型で安価な分析システムを開発することを目的としている。 平成28年度は,前年度に作製したCD型マイクロチップを用いる酵素免疫測定法(ELISA)について検討した。すなわち,CD型マイクロチップの検出チャンバーの内壁に抗IgG抗体を固定化し,タンパク質の非特異的吸着を防止するためのBSAによるブロッキング処理を行った後,チップ上のリザーバーに入れたIgG溶液,洗浄溶液,HRP標識抗IgG抗体溶液,洗浄溶液および過酸化水素を含むAmplex Red溶液を,チップの回転による遠心力を利用して順次検出チャンバーに導入し,酵素反応により生成したレゾルフィンの蛍光強度を前年度に開発した小型蛍光検出システムを用いて測定することにより,IgGの定量を行った。 その結果,IgGの濃度が増加するにしたがって蛍光強度は増加し,500 ng/mL以上の濃度でほぼ一定の値となることがわかった。このとき,100 ng/mL以下の濃度範囲におけるIgGに対する検量線は良好な直線性を示し,検出限界(3σ)は19 ng/mLと見積もられた。また,異なる4枚のCD型マイクロチップを用いて行ったIgGの繰り返し測定における相対標準偏差(RSD)は3.1~11.3 %であった。 また,96穴マイクロプレートと市販のマイクロプレートリーダーを用いる従来のELISA法によるIgGの測定についても検討したところ,本法の感度は従来法よりもやや劣るものの,検量線の直線性や測定の再現性についてはほぼ同等であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,前年度に開発した新しい流路デザインのCD型マイクロチップとターンテーブルを用いて,チップの回転により生じる遠心力を利用してリザーバー内の試薬と試料を分離・検出チャンバーに送液してELISAを行う方法を検討した。IgGをモデル試料として用い,抗体の固定化方法や試薬濃度,反応時間,ブロッキング試薬の種類などの測定条件を最適化した結果,開発したシステムを用いてELISAが可能なことが確認され,96穴マイクロプレートと市販のマイクロプレートリーダーを用いる従来のELISA法と比較して,試薬や試料の使用量を約1/70に,分析時間を約1/4に削減することに成功した。また,本システムの重量は市販のマイクロプレートリーダーと比較して約1/10であり,分析システム全体の大幅な小型化と軽量化を達成することにも成功した。 以上のように,本研究課題は当初の計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,開発した分析システムによる麻疹や風疹等の感染症に対する抗体価検査を検討するとともに,96穴マイクロプレートと市販のマイクロプレートリーダーを用いて,従来のELISA法とのクロスチェックを行う。さらに,CD型の電子回路基板上にバッテリー,電源,光源,検出器,アンプ,データ処理器等を集積化し,これをCD型マイクロチップと一体化して回転させることにより,検出とデータ処理を回転したまま行うことが可能な分析システムを開発する。これにより,CD型マイクロチップを用いる感染症検査システムを完成させる。
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