2016 Fiscal Year Research-status Report
濃厚電解質水溶液中のイオン活量測定の基盤形成と海水の酸性化精密計測への応用
Project/Area Number |
15K05552
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
垣内 隆 甲南大学, 理工学部, 特別研究員 (20135552)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅博 甲南大学, 理工学部, 教授 (60182648)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | pH / イオン活量 / 塩橋 / イオン液体 / 海水 / 酸性化 / 濃厚電解質 / 液間電位差 |
Outline of Annual Research Achievements |
海水pHの精密測定に関して、1.イオン液体塩橋-試料水溶液界面の分極抵抗の低減、2.新規イオン液体構成アニオンとして用いるbis(triflouoromethanesulfonyl)amide 解離度決定、を目的として研究を行った。 tributyl(2-methoxyethyl)phosphonium bis(triflouoromethanesulfonyl)amide (TBMOEPC1C1N) の基礎物性とその塩橋機能を調べた。 TBMOEPC1C1N の水への溶解度は 0.6mM であり、このアニオンの疎水性から推定される値に一致した。TBMOEPC1C1Nからなるイオン液体塩橋の分極抵抗はアニオンがbis(pentafluoroethanesulfonyl)amideである TBMOEPC2C2Nのそれに比して1/2以下に減少した。しかし、TBMOEPC1C1Nからなるイオン液体塩橋の電位安定性はTBMOEPC2C2Nのそれと同程度(95%信頼区間で± 0.02)にとどまった。TBMOEPC1C1Nへの水の溶解度は 0.6 wt% で、TBMOEPC2C2Nの2倍である。この水の溶解が電位安定化を妨げているものと推察される。 イオン液体中に含まれる塩化物イオンの電気化学的除去の基礎的知見を得た。この結果は、本研究で開発した電気化学セルが、水飽和イオン液体の電気化学における安定な参照電極としても用いることことができることを示した。これは、水飽和イオン液体の電気化学研究の基礎として有益である。 pKaが1.7 であるとされていた bis(trifluoromethanesulfonyl)amide 酸は 水溶液中では強酸であることを確かめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで用いてきたイオン液体塩橋は、海水の精密pH測定にもちいることができるが、液間電位差の再現性が95%信頼区間で±1mV、pH にして ±0.017 にとどまる。この改善のために、イオン液体-水溶液間の分極抵抗を低減することが必要である。このために、より水に対する溶解度が大きいイオン液体を新しく開発し、その物性を調べた。この新しいイオン液体では分極抵抗はおおむね半分に低下するものの、再現性は改善しなかった。これは、水のイオン液体への溶解度が大きくなることによると思われる。この結果は、イオン液体塩橋用イオン液体の選択、設計、改良、装置化における重要な知見となる。 イオン液体の電気化学的精製法の見通しが得られた。これまで弱電解質とされてきた bis(trifluoromethanesulfonyl)amide acid が水溶液中で強電解質として振る舞うことが確認できたことは、これをアニオンとするイオン液体が広く用いられていることからすると、意義深いと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
イオン液体塩橋のイオン液体への水の溶解を押さえるために、1.疎水性ポリマーによるイオン液体のゲル化、2.イオン液体塩橋を構成する電位決定イオン液体への超撥水性イオン液体の混和、3. 上記1と2の複合、について研究を行い、海水pH 測定におけるの不確かさを5%信頼区間で±0.2 mV、pH にして ±0.003 程度を実現することを目指す。 また、イオン液体塩橋の電位安定性にはイオン液体の純度も影響すると考えられる。しかし、一般にイオン液体の精製は困難であり、高純度イオン液体を得ることはきわめて難しい。昨年度までにほぼ確立したイオン液体の電気化学的精製法を用いて、高純度イオン液体をえることを目指す。
|
Research Products
(4 results)