2015 Fiscal Year Research-status Report
新規細胞膜シートを用いた生体膜反応場における膜タンパク質機能の1分子計測
Project/Area Number |
15K05556
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
奥野 貴士 山形大学, 理学部, 准教授 (80411031)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 敏彦 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10332868)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 細胞膜 / 薬物排出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はヒト培養細胞から約10マイクロメートル程度の小胞状に細胞膜を切り出した細胞膜試料を凹構造を施した微細加工基板上に固定し、細胞膜を介した物質輸送の蛍光顕微鏡による可視化を目的とする研究である。本年度は当初の計画通り、主として、使用に適した微細加工基板のパターンの検討と基板への細胞膜試料の固定方法について検討した。また、微細加工基板内への蛍光色素導入を検討するために使用する蛍光色素についても検討した。 まず、細胞膜を固定するための適当な微細孔のサイズを検討した。まず細胞膜から切り出す細胞膜の平均直径を約9~10μm程度に再現性よく揃える反応溶液の条件を確立した。小胞状の細胞膜基板表面に固定した際、少なくとも10μm2以上の面積で細胞膜を基板に固定できることから、微細孔のサイズを1~3μm程度に設定し、小胞状の細胞膜を微細孔上で固定することとした。さらに、基板表面への細胞膜固定(吸着)の効率を高めるために、ガラス基板表面の修飾条件を検討した。強酸またはアルカリ溶液でガラス基板を十分に洗浄後、正電荷を帯びたポリマーや小分子等が細胞膜試料を固定する有効な修飾方法である手がかりを得た。また基板表面に固定したアビジンに対して細胞膜表面のビオチン結合が吸着効率を上げることも明らかにした。一方で、これまで細胞膜試料を調製できる細胞はHeLa細胞だけであったが、MDCK、HEK293T、Caco-2細胞などいくつかの細胞でも効率よく細胞膜試料を調製できることに成功し、HeLa細胞では発現効率が上がらないタンパク質なども用いることができ、研究効率が飛躍的に向上した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、微細加工基板にヒト細胞膜を固定した新しいモデル膜を構築し、ヒト細胞における細胞膜を介した物質/情報輸送を高感度に定量評価することを目的とする。H27年度においては、本研究に適した微細加工基板のパターンの検討と基板への細胞膜試料の固定方法について検討した。また、これまで細胞試料調製にはHeLa細胞を用いていたが、標的タンパク質の発現等の至適条件検討に制約があった。本年度は、幾つかの培養細胞を用いて細胞膜試料の調製条件を検討した。 数μm程度のサイズの凹構造を施した微細加工基板上に、細胞膜試料を載せる場合の最適な細胞膜試料と微細加工基板のパターンについて検討した。その結果、細胞から調製できる細胞膜試料のサイズを9~10μm程度に再現性よく揃える反応溶液の条件を確立した。さらに、それら細胞膜試料を効率よくφ2~3μmの凹構造上に導き、細胞膜を載せる微細パターンを確立することができた。また、基板表面への細胞膜試料の固定・吸着効率が、本研究の一つのボトルネックとなっていた。本年度は、カバーガラスを用いて細胞膜試料の吸着条件を検討した。その結果、強酸やアルカリ溶液で洗浄したガラス基板上に細胞試料を吸着させることができるが、正電荷を帯びたポリマー等で修飾した基板では、より高い確率で細胞膜試料を吸着させることができることが明らかとなった。さらに、基板表面にアビジンを固定した場合、細胞試料をビオチンした試料が効率よく固定できることを見出し、全体のプロセスの効率を飛躍的に高めることが期待できる。本年度は、MDCK、HEK293T、Caco-2細胞などいくつかの細胞で同程度の効率で細胞膜試料の調製条件を確立し、特に一般的に薬物排出の評価に用いられる細胞を用いて研究を展開できることを見出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、主として2つの実験系を構築する。1つは細胞膜を介して排出された薬物を模倣した蛍光色素が微細加工基板に蓄積する状態の観察を実施する。薬物排出ポンプを一過的に発現させた培養細胞から調製した細胞膜試料を微細加工基板上に固定する。細胞膜外側は微細構造側を向いているため、排出された薬物が微細加工基板内に蓄積する。薬物を模倣した蛍光色素を用いて、排出活性を評価していく。標的タンパク質特異的な阻害剤を添加することで、特定分子の排出活性評価を行う。また、膜を介した情報伝達についても評価系を構築する。幾つかのレセプターを標的とし、それらレセプターを一過的に発現させた細胞膜試料を調製し、微細加工基板上で細胞膜を介したシグナル伝達の再構築を行う。また、本年度も継続して、細胞膜試料が調製できる細胞株を検討していく。
|
Causes of Carryover |
H27年度、直接経費として2,000,000円を計上し、1,869,440円を使用し、130,560円の残高が生じた。生じた残額は直接経費の約6.5%である。H27年度の研究は計画通り実施し、計画通りの物品等を購入した。主として消耗品、試薬等への使用を計画していたが、若干の残金が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度生じた6.5%程度(13万円)の未使用の研究費は、次年度の消耗品等の購入に充て、有効に研究活動に使用する。
|
Research Products
(5 results)